記事「日経新聞」 の 検索結果 2562 件
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『タイム・アフター・タイム』(13~19)美南の実家は古くからの農家で、広い敷地には天守閣のような屋敷が建っている。 尾崎は大きなダンボール三箱分ももいでいたトウモロコシやゴーヤや茄子を、軽トラから自分の荷台に載せ始めた。 ..
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『タイム・アフター・タイム』(7~12)「あのさ、一つだけ確かめていい? 久遠さんって高校の頃、絶対モテたよな?」 「なんで?」 「誰でもそう思うって」 「まあ、でもちょっと口悪いんだよ」 「……尾崎と久遠さんって、何かあっ..
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『タイム・アフター・タイム』(1~6)第一章 夏を奪う者 「わぁーー、管理事務所に戻ろうか?」 ずぶ濡れで叫ぶのは、尾崎颯である。 「もう遠いって! ひゃーー、走れ、走れ!」 そのあとを同僚の野上洸一が迫ってくる。 場..
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日経新聞で4月1日から『タイム・アフター・タイム』が連載開始日経新聞で3月1日からは『タイム・アフター・タイム』がスタートします。新しい連載小説タイム・アフター・タイム 吉田 修一 王 秉蒼 画 本紙朝刊連載小説、諸田玲子氏の「登山大名」は31日で完結し..
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『登山大名』(407~411)「久恒。いいたいことはわかった。が、この件はわしにまかせよ」 「父上……」 「御下知のことは忘れ、二度と口にするでない。家中の者たちにもいうてはならぬぞ」 遠侍で待っていた平作や久恒の..
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『登山大名』(401~406)久恒の正室は光政の娘の佐阿姫である。七十をすぎた光政が今生の別れに娘の顔を見たいというなら、だれも反対できまい。 「殿は上屋敷にて、舅どのへの送別の宴を催すおつもりにございます。お二人に存..
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『登山大名』(394~399)忠清が死んだ――。 わたしよりも九歳も年下で、わたしよりはるかに出世を遂げた従弟。 もう一度、会いたかった。辛辣なことばでなじられてもよい。忠清が保身のためにわたしを切り棄てても、今..
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『登山大名』(388~398)「おぬしは瀕死の小河弥右衛門に探りを入れた。この岡で、安威の方とおあいどのが同一人物だと知る者がどれだけいるか、それを調べに参ったのだろう、もはや、ごまかしはきかぬぞ」 「たとえ仰せのとおり..
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『登山大名』(376~371)わたしの旧臣の一人に小河弥右衛門がいる。 明暦三年、らんと出会った翌年、中川の家臣にとりたてられた。 五人組の宇目に中川家へ入りこんでいる公儀の密偵を探索させる際、当時は新参者だった..
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『登山大名』(370~375)「こたび、そなたを岡へ招いたわけは、聞いておろうの」 「鎌倉に創建される御寺の開山に、拙僧をご推挙くださったそうにて……」 「うむ。そなたなら願うてもない。東渓院は夏姫の菩提寺、そもそも夏..
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『登山大名』(364~369)第十四章 東渓院 夜陰にまぎれて碧雲時の山門をくぐる。 孫左に先導されて本堂へ入った。供は平作ただ一人、こうして隠密裏に動きまわれるのもわたし自身が隠居して久しいがゆえである。 本堂で..
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『登山大名』(361~363)なぜ、加衣を手放そうと思ったのか。 加衣の行く末をおもんぱかったからだ。わたしは老人である。この先そう長くは生きられない。 むろんそれだけではなかった。 佐代は生きていた。わたし..