記事「日経新聞」 の 検索結果 2564 件
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『波止場浪漫』(336&337)みだれ髪(十一)&(十二) ふたりが勝手口から豪雨のなかへとびだそうとした。つっかい棒をはずしかけたとき、どこかでドーン、ゴォー、ザザザザーと異様な音がした。つづいて芝栄か、その先の税関か、だ..
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『波止場浪漫』(334&335)みだれ髪(九)&(十) 夜半になっても、風雨は猛威をふるっている。 けんは寝返りをうった。と、そのとき、台所で人の気配がした。 書生である。残ったままになっていた握り飯を竹籠につめよう..
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『波止場浪漫』(332&333)みだれ髪(七)&(八) 「おけんさん。おねがいします。あたしはどうしてもこの人といかなくちゃならない、この人にはあたしの助けが必要なんですよ」 「おようさん・・・・・・」 「東京へ無事に着い..
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『波止場浪漫』(330&331)みだれ髪(五)&(六) 「この雨のなかを・・・・・・ようもまァ、小さい子供をつれて・・・・・・」 「そのままでは風邪をひきますよ。お風呂場でぬれたものを・・・・・・ヒサさん、お湯を沸かして。わ..
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『波止場浪漫』(328&329)みだれ髪(三)&(四) 「とにかく、ご飯だけは炊いておきましょう」 けんはヒサと握り飯をつくることにした。おちょうが生きていたらそうしたにちがいない。風雨がしずまれば人がおしよせる。 「あ..
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『波止場浪漫』(326&327)みだれ髪(一)&(二) ここ数日、雨がつづいている。しかも雨脚は、はげしくなる一方だ。 風雨の吹きこむ箇所がないか、手分けしてしらべてまわっていたヒサとけんは、ようやく台所でひと息ついたと..
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『波止場浪漫』(325)二十歳のころ(二十一) 「お父ちゃんの脇差は?」 「とりあげられた。おまえらに武器はいらんといわれて・・・・・・で、丸腰の軍夫はバッタバッタと殺された。みんな、文句もいえずに死んでった」 「..
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『波止場浪漫』(323&234)二十歳のころ(十九)&(二十) 「どっかへいっちまいましたッ」 数日後の朝、安兵衛がとんできた。 「大変です、こんなものが」 家探しをしていたヒサが書き置きを見つけた。 ――長い..
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『波止場浪漫』(320~322)二十歳のころ(十六)&(十七)&(十八) 「五郎くんは今ごろ、湯治にいってるんじゃないかな。いっしょにゆこうと誘われましたが、こっちはそんな悠長なことはしてられません。雲水とはちがって、托鉢で資..
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『波止場浪漫』(317~319)二十歳のころ(十三)&(十四)&(十五) 「先日、梅陰寺で初志郎のハナシをしたんだよ、和尚さまは、とにかく時が経つのを待つしかないだろうって・・・・・・」 「初兄ちゃんにお嫁さんをもらって、あ..
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『波止場浪漫』(315&316)二十歳のころ(十一)&(十二) 歩きながら、初志郎がなぜ空き家に入りこんでいたのかと、けんはかんがえていた。 軍歌と万雷の拍手で見送られ、帰還すればしたで盛大な祝賀会で迎えられる軍人と、満..
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『波止場浪漫』(313&314)二十歳のころ(九)&(十) 「だけど頭が痛いんでしょ」 「あァ、痛いとも。われそうだぜ。体中が悲鳴をあげちゃァ、いるが、ナ、こいつは医者なんぞに治せる病じゃねえんだ」 「ならどうしたら・・・..