記事「迷いの旅籠」 の 検索結果 126 件
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『琥珀の夢』(203~206)この時代、商標登録や製法の特許申請をする習慣は、船場の中でもほとんどなかった。 それを信治郎に教えてくれたのは小西儀助であった。 儀助は“赤門印葡萄酒”を販売するにあたって、自分たちの作..
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『迷いの旅籠』(383&384)「その時には、臆せず躊躇わず、この黒白の間から踏み出してください。それだけをお願いしようと思って伺いました」 「はい」 「金太も捨松も、貴女を好いています。貴女がどこへ行かれようと、うるさいほ..
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『迷いの旅籠』(380~382)青野利一郎は、もう、おちかが知っている「若先生」ではなかった。 月代をそり上げ髷を整え、真新しい紋付袴に身を包んだ凛々しい武士がそこにいた。 「本日のあっしは青野様の中間でございます」 ..
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『迷いの旅籠』(377~379)「さあ……もういいわ」 満足そうに微笑んで、お梅は瞼を閉じた。 「亡くなりました」 おちかは静かにそう告げた。 「結局のところ、お梅さんは何者だったんでございましょう」 「何者と..
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『迷いの旅籠』(373~376)「わたしは神田の三島屋から参りました。いつぞやお目にかかった、ちかでございます」 その節はありがとうございました―― あの日、黒白の間には紅葉と萩を活け、風変りな秋刀魚の墨絵の軸を掛けてい..
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『迷いの旅籠』(369~372)「これも、母からの伝聞でございます。その母も、自分の耳で聞いたわけじゃございません。美仙屋さんの火事の後、町の噂で聞きかじりましてね。 ――燃えている最中に、女の笑い声がしたというんです。ざま..
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『迷いの旅籠』(366~368)「美仙屋さんが焼ける、三月ばかり前でしたろうか。わたくしの実家で料理人が怪我をしたり、祖母が風邪をこじらせて長いこと寝込んだり、弟の目に繰り返しものもらいができたりして」 気にした父親が、きち..
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『迷いの旅籠』(363~365)どこから申し上げればいいか――と呟く。 「では、こちらから少しお尋ねしましょう。美仙屋さんは確かに香具屋なのですね。お店はどこにあったのでしょうか」 「芝の神明町でございますよ」 勘一が..
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『迷いの旅籠』(359~362)さて、お使い新太を走らせて、何度か松田屋とやりとりをし、首尾よく席をとることができた。葉月(八月)十三日の夕。 「恵比寿屋さんの切符だから、特に席を空けてくれたんでしょうか」 「そんなんじゃ..
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『迷いの旅籠』(355~358)それはどうだろう。おちかは首をひねった。 「駄目でもともとでございます。手前の心当たりの菓子屋を回って、月に一度、朔日にだけ買いに来るお客様の覚えがないか尋ねてみましょう」 甘い物好きの「..
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『迷いの旅籠』(351~353)「よし、そうこなくっちゃ」 富次郎は手を打って喜び、おこしをつまんで口の中に放り込んだ。「さあ、語った語った!」 「――そうして、目が覚めてみたらわたしはここに一人いて、次の間では従兄さんと..
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『迷いの旅籠』(347~350)「お二人、気が合いますわね。ちょうどおやつ時です。何かお持ちしますから、どうぞお続けくださいな」 台所では、おしまがおやつの支度をしていた。 番茶を淹れて黒白の間に戻ると、勘一は縁先から座..
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