記事「外国人」 の 検索結果 4962 件
-
十三 蟻地獄の罠(12)何も悪いことをしているのではない。親切にしてやった当然の報酬を受け取っているだけだ。 柴崎はいつもそう思いながらも、どこかで誰かかが柴崎の行動を見張っているような気がして、落ち着かない気持ちでい..
-
十三 蟻地獄の罠(11)「大丈夫ですかね」 「何がだよ」 「いいえ、柴崎さんに奢って貰ったりして、急に態度が大きくなられてもねえ」 「心配いらないよ。もともとあいつは無趣味で友達もいないから、金が溜ってしょうがないんだ..
-
十三 蟻地獄の罠(10)扱い慣れている筈のキャッシュディスペンサーのタッチパネルが、お前はこのカードの正規の持ち主ではないだろうと言っているかのように、緩慢な反応を見せていた。 柴崎はまるで指紋を押捺するかのように、指..
-
十三 蟻地獄の罠(9)どれくらい待ったのだろうか。 待合室で静かに面会の順番を待っている他の人間が、待つことに慣れていない男にとって不思議なもののように感じられたし、のんびりとした応対をする窓口の係官の様子にもいい加..
-
十三 蟻地獄の罠(8)様子が分からぬ男がきょろきょろしていると、玄関先に立っていたガードマンがにこやかな笑顔で駆け寄り、何の用事で来たのかと問いかけてきた。 男は収容されている中国人に面会に来たのだと、ぶっきらぼうに..
-
十三 蟻地獄の罠(7)男は十条駅からタクシーに乗り込むと、西が丘の入管に向かうように指示した。 タクシーの運転手はやたらと饒舌な男で、初めて入管へ面会に行くのは初めてだと男が言うと、運転手は毎日のように面会に行く日本..
-
十三 蟻地獄の罠(6)面会受付もひと段落して、柴崎は事務室で暫し休息しようとしていた。 「柴崎君、休憩中のところ申し訳ないが、この申し出の処理をお願いできないか」 処遇管理の統括入国警備官がそう言って、柴崎に一枚の..
-
十三 蟻地獄の罠(5)柴崎は要領が悪いのか、手隙のときに他の業務を手伝おうとすると、拒否されることが多かった。柴崎に手伝って貰うことで、余計に手間が掛かるというのだった。 せっかく一発で昇任試験に合格しても上司に認め..
-
十三 蟻地獄の罠(4)これだから摘発集中月間は嫌だって言うのだ。処遇管理係の柴崎は面会者の余りの多さに辟易していた。 深夜、早朝を問わないで、次から次へと摘発された身柄が収容されてくる。摘発に従事している入国警備官も..
-
十三 蟻地獄の罠(3)「お前がホアホアか」 男は薄明かりの中で顔を上げ、こちらを向いたほっそりとした相手が、留学生崩れの中国人だと知っていた。青臭い学生崩れが悪戯をしているという認識しかなかったのが、男に常にはない油断..
-
十三 蟻地獄の罠(2)男はその暴力団の周辺構成員であった。縄張りの締め付けを命じられて、中国人グループの本丸に乗り込んできたのだった。 何、どうということはない。ちょいと痛めつけて、仕入先をこちらの息の掛かったところ..
-
十三 蟻地獄の罠(1)妙に薄暗い部屋だ。玄関の鍵を掛け忘れたのか、ドアノブを捻るとあっけなく男は部屋の中に入って行った。 部屋の中には異臭が漂っている。男にはその匂いが何物なのか直ぐに分かった。大麻樹脂を炙った匂いだ..