記事「長篇」 の 検索結果 132 件
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企鵝(きが)の翼 十九(二)書斎の机には、先程の封筒と版画がそのまま残っていた。 改めて、封筒を手に取る。消印は関内のようだ。社内で一般的に使用されているクラフト封筒で、宛名は黒いサインペンで確り記されており、これまで届い..
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企鵝(きが)の翼 十九(一)十日間は、何事も無く過ぎた。 嘉治郎の容態は依然として一進一退を繰り返し、二十四時間体勢で看護が続いている。 会社の重役らしき人間たちが毎日交代で訪れるが、嘉治郎本人と面会が叶う事は無く、眞..
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企鵝(きが)の翼 十八(六)「でもそうすると、宇敷さんの殺害と一連の郵便物は関連が有るんですか、無いんですか、どっちなんです?」 「哲馬君、宇敷氏の件は殺人と断定された訳じゃ有りませんよ」 「じゃあ自殺でも、事故死でも構いま..
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企鵝(きが)の翼 十八(五)「それで、用って何ですかセンセイ」 「ああそう、これを眞人君にお返ししようと思いましてね」 桐ヶ谷は引き出しから箱を取り上げ、テーブルの上に置いた。 「これ、例の郵便物じゃ有りませんか!」 ..
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企鵝(きが)の翼 十八(四)翌日、哲馬は桐ヶ谷からの呼び出しを受け、眞人と共に六角橋へ戻った。 眞人は始終不安げな様子で、手に持った鞄で身体を守るようにしながら、バスの乗客や道行く人々に絶えず目を走らせている。 「桐ヶ谷..
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企鵝(きが)の翼 十八(三)宇敷が死んだ日から、哲馬は就寝時に必ず、客間の扉を開け放つ事にしていた。 二階の東側を使用しているのは、眞人と哲馬だけだ。眞人の部屋は突き当たりにあるから、もし誰かが侵入しようと思えば、必ず哲馬..
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企鵝(きが)の翼 十八(二)「主治医は何だって?」 「うん……ここ二週間が、目処らしい」 宇敷の死後、嘉治郎は益々容態を悪化させていた。屋敷には警官の他に、医者と看護婦も頻繁に出入りするようになり、騒然としている。 嘉..
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企鵝(きが)の翼 十八(一)桐ヶ谷はその日のうちに、六角橋へ戻る事になった。 頼りになる成人男性の居ない事が不安なのか、頻りと引き留める蜂谷を漸く宥め、玄関を出る。 門まで見送りに出た哲馬に、桐ヶ谷は低い声で言った。 ..
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企鵝(きが)の翼 十七(五)「つまり、他殺の可能性が高いんですね?」 唐突に、桐ヶ谷が言った。 高槻は、苦笑いを浮かべる。 「やっぱり――分かります?」 「あれだけしつこく関係者のアリバイを探っていれば、否応無く分か..
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企鵝(きが)の翼 十七(四)高槻は二人のやり取りを唖然として眺めていたが、やがて小さく咳払いをすると手帳を開いて質問を始めた。 「ええ――眞砂さん、これから幾つか質問をさせて頂きます。ほんの形式上の事ですので、思いついた事を..
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企鵝(きが)の翼 十七(三)間も無く、桐ヶ谷が蜂谷を伴って戻って来た。蜂谷はおどおどとした視線で部屋中の人間を見回してから、勧められるまま眞人の隣に浅く腰掛けた。 「形式的な質問ですから、どうぞ気楽になさって下さい」 「あ..
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企鵝(きが)の翼 十七(二)「では昨日の行動について、出来るだけ詳しく教えて頂けますか」 「昨日は朝食の後、書斎で宇敷さんと一緒に仕事をして、昼前に一旦部屋に戻りました。間も無く四條がやって来て、少し話をしました」 高槻の..