記事「太宰治」 の 検索結果 922 件
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女の決闘 第5章(1)決闘の次第は、前回に於いて述べ尽しました。けれども物語は、それで終っているのではありません。火事は一夜で燃え尽しても、火事場の騒ぎは、一夜で終るどころか、人と人との間の疑心、悪罵《あくば》、奔走《ほん..
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女の決闘 第4章(7)きょうまで暮して来た自分の生涯は、ばったり断ち切られてしまって、もう自分となんの関係も無い、白木の板のようになって自分の背後から浮いて流れて来る。そしてその上に乗る事も、それを拾い上げる事も出来ぬので..
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女の決闘 第4章(6)こんな事を考えている内に、女房は段段に、しかも余程手間取って、落ち着いて来た。それと同時に草原を物狂わしく走っていた間感じていた、旨《うま》く復讐を為遂《しと》げたと云う喜も、次第につまらぬものになっ..
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女の決闘 第4章(5)その刹那《せつな》に周囲のものが皆一塊になって見えて来た。灰色の、じっとして動かぬ大空の下の暗い草原、それから白い水潦《みずたまり》、それから側のひょろひょろした白樺の木などである。白樺の木の葉は、こ..
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女の決闘 第4章(4)それから二人で交る代る、熱心に打ち合った。銃の音は木精《こだま》のように続いて鳴り渡った。そのうち女学生の方が先に逆《のぼ》せて来た。そして弾丸が始終高い所ばかりを飛ぶようになった。 女房も矢張り..
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女の決闘 第4章(3)私の知った事でない。もうこうなれば、どっちが死んだって同じ事だ。二人死んだら尚更《なおさら》いい。ああ、あの子は殺される。私の、可愛い不思議な生きもの。私はおまえを、女房の千倍も愛している。たのむ、女..
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女の決闘 第4章(2)ああ、決闘やめろ。拳銃からりと投げ出して二人で笑え。止《よ》したら、なんでも無いことだ。ささやかなトラブルの思い出として残るだけのことだ。誰にも知られずにすむのだ。私は二人を愛している。おんなじよう..
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女の決闘 第4章(1)決闘の勝敗の次第をお知らせする前に、この女ふたりが拳銃を構えて対峙《たいじ》した可憐陰惨、また奇妙でもある光景を、白樺《しらかば》の幹の蔭にうずくまって見ている、れいの下等の芸術家の心懐に就《つ》いて..
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女の決闘 第3章(4)すぐつづけて原作は、 『この森の直ぐ背後で、女房は突然立ち留まった。その様子が今まで人に追い掛けられていて、この時決心して自分を追い掛けて来た人に向き合うように見えた。 「お互に六発ずつ打つ事に..
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女の決闘 第3章(3)粗末な夕食の支度にとりかかりながら、私はしきりに味気なかった。男というものの、のほほん顔が、腹の底から癪《しゃく》にさわった。一体なんだというのだろう。私は、たまには、あの人からお金を貰った。冬の手..
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女の決闘 第3章(2)私はあさましく思い、「あなたよりは、あなたの奥さんの方が、きっぱりして居るようです。私に決闘を申込んで来ました。」あの人は、「そうか、やっぱりそうか。」と落ちつきなく部屋をうろつき、「あいつはそんな..
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女の決闘 第3章(1)女学生は一こと言ってみたかった。「私はあの人を愛していない。あなたはほんとに愛しているの。」それだけ言ってみたかった。腹がたってたまらなかった。ゆうべ学校から疲れて帰り、さあ、けさ冷しておいたミルク..