記事「日経新聞」 の 検索結果 2562 件
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『タイム・アフター・タイム』(235~240)その時、出航を知らせる汽笛が鳴った。 「まだ最終便じゃないですもね」 そう呟きながら、男がフェリーを見送る。 「どれくらい探し回ってんの?」 「沖縄に来たのはこれが二回目です。前回..
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『タイム・アフター・タイム』(229~234)結局一週間の入院を終えて祖母が島へ戻ってきたのは、一昨日のことである。 自転車で集落に入ろうとすると、海沿いの道にある尾崎と久遠の家の前で、旅行客らしい若者たちが背伸びして石垣の中を覗き..
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『タイム・アフター・タイム』(223~228)ジムの電話が珍しく鳴ったのは、昼寝から起き出していつものようにコーヒーを淹れている時だった。 聞こえてきたのは尾崎の声で少し上ずったその声に、一瞬、久遠に何かあったのかと思った。しかしよ..
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『タイム・アフター・タイム』(217~222)中へ入ると、改めて暗い場所だった。 「売店のおばさんから、ここの電気だけなら点けていいって言われてて」 「あのおばさん、そんなケチ臭いこと言うの?」 比嘉はさ財布を探しに来たことを思..
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『タイム・アフター・タイム』(211~216)第八章 比嘉丈雄 四十二歳/元世界フライ級チャンピオン 「洋子姉、俺が頼んだコーヒー豆、いつ入荷?」 「注文したんだけどね、まだ来ないね」 比嘉はカゴにつめた野菜や肉をレジに運んだ。 ..
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『タイム・アフター・タイム』(205~210)「おー、ほんとに久遠が来たー」 「おー、ほんとに一真がいるー」 さすがに二十年以上ぶりなのだから、本来ならもう少し何か挨拶もあるのだろうが、同級生というのはその辺りが簡単に吹っ飛んでしま..
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『タイム・アフター・タイム』(199~204)「……元の旦那さん、今、海外にいるんだって。二人とも大学の講師なんだよ。彼女は植物学」 「お子さんは?」 「男の子が一人。彼女が引き取ってる」 「いくつ?」 「今度、中学生だって」 ..
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『タイム・アフター・タイム』(193~198)「そうだ。もしよかったら、今度、一真の所に遊びに行かない? いい所なんだよ」 「懐かしい。ずっとこっちにいるの?」 「うん、今、伊豆で大輝さんっていうパートナーと暮らしてて、子供もいる。拓..
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『タイム・アフター・タイム』(187~192)尾崎の話によれば、赤松峰子との一回目の打ち合わせは、かなり屈辱的なものだったらしい。 「で、誰なの? 最終的に甲斐宇童を推したのは? 審査員たちの総意、総意って、そんな当たり障りのない話を..
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『タイム・アフター・タイム』(181~186)第七章 「いい気なもんだよ」 ミーティングルームに、中井チーフの吐き捨てるような声が響いた。 「……久遠さんってさ、前からそうだけど、詰めが甘いっていうか、雑っていうか、そういう所あるよね..
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『タイム・アフター・タイム』(176~180)警察から連絡が入ったのは大晦日の朝だった。 「見つかったの?」 「まだ、居場所は分からないんだけど、颯たちらしい二人が、いくつか防犯カメラに映ってたらしくて確認してほしいって」 その..
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『タイム・アフター・タイム』(170~175)ただ、律子と父に宛てた置き手紙があった。 『ご迷惑ばかりかけて本当にすいません。数日だけ一人にさせて下さい。必ず戻ります。本当にごめんなさい』 尾崎の置き手紙が見つかったのは、クリスマ..
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