記事「日経新聞」 の 検索結果 2588 件
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『黒書院の六兵衛』(132&133)どこからともなく、茶坊主の間延びした声が通った。 「ごほんばんー、おォ引ィけェー、シィーッ、シィーッ」 日勤の下番者は、静かにすみやかに退出せよ、という意味であろうか。 加倉井隼人と福..
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『黒書院の六兵衛』(129~131)「嫁御殿より着物を預って参った。おい、お愛想のひとつぐらい言うたらどうだ。この雨の中を、なにゆえ拙者がおぬしの褌を運ばねばならぬ」 当の六兵衛は馬の耳に念仏なのだが、御玄関のほうから野次..
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『黒書院の六兵衛』(127&128)私の知る事の顛末てえのは、まあそんなところでござんす。 給金ですか。へい、それも一両から三両に上げていただきやしてね。おまけに、晩飯にはきっと一合の燗酒が付きやすんで。 今の奥様はおおら..
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『黒書院の六兵衛』(124~126)「やい、おかね。あのお方はいってえ、どこのどなたさんだえ」 「どこのどなたもあるもんかね。うちの御殿様だよ」 「そのほうがよっぽどマシな話だよ」 そこでおかねが、ザッとかいつまんで話..
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『黒書院の六兵衛』(122&123)「おい、おまつ。いってえどうなってんだ」 おまつはまだ十三か四の小娘です。 「おかねさんが、暇を出されたくなけりゃ何も言うなって」 いいかね、旦那。武家屋敷の奉公人なんてのはね、主..
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『黒書院の六兵衛』(121)豆撒きをおえたあと、御殿様から直々に御酒を賜りやしてね。その晩は奴の四人が四人、正体もねえほど酔い潰れて寝ちまいやした。 考えてもおくんなさいまし。いつもなら生味噌を肴に一台の酒を二人で飲み..
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『黒書院の六兵衛』(118)淀屋辰平はその年のうちに何べんも顔を見せやしたが、ごろつきどもを連れてきたのは初めの一度きりでござんす。 二度目からのお供は上品な番頭と躾のいい出稚、主人の辰平もまさか高利貸しには見えねえ福..
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『黒書院の六兵衛』(117)ともかく、ここは私の出番だと門長屋を駆け出して見れァ、御門前にはひとめでお店の主人とわかる恰幅のいい男が、ごろつきどもを従えて踏ん張っている。 これがまた、どこが鬼だと思うぐれえの福相でござ..
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『黒書院の六兵衛』(116)それからしばらくの間は何ごともなく過ぎやして、秋も盛りのころだったどしょうか。 はい、さいです。おととしの秋、慶応二年寅の年の秋でござんす。 門番の奴が押問答をさてやがるから、この桟窓か..
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『黒書院の六兵衛』(114&115)こいつは尋常じゃあねえぞ、と勘づいたなはおとっしの夏でしたか。 盆の掛け取りが一息ついたころに、奥様のお里から兄様がお見えになった。番町に御屋敷を構える、大御番士の兄様でござんす。 奥様は..
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『黒書院の六兵衛』(113)まあ、そんなわけでござんすから、殿様は御屋敷にいらっしゃるときのほうが、かえって気が抜けなかったんじゃねえかな。 ご登城の朝なんか、奥様に見送られて御門を出るまでたいそう鯱張っていなさるんだ..
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『黒書院の六兵衛』(111&112)ご奉公に上がってじきに、御屋敷の台所が苦しいてえのはわかりやした。 でもね、そんな事情はどこ同しなんです。 こたびはこれくらいで了簡せい。へい、かしこまりやした。 お武家と町衆とのや..