記事「日経新聞」 の 検索結果 2587 件
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『琥珀の夢』(48~51)儀助への挨拶が終わると、伊助と信治郎は奥の棟の前に行き、伊助が中にむかって声をかけた。 「ごめんやして、ごめんやして」 障子戸が開き、下女のトメがあらわれた。 すぐに御寮さんとお嬢さん..
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『琥珀の夢』(45~47)昨日までと店の中の空気がまるで違っていた。 順調な商いもそうだが、小西儀助は三十六歳にしてすでに貫禄が備わっていた。 倒産寸前まで追い込まれていた初代儀助の小西屋を、奉公人の彼が救っ..
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『琥珀の夢』(41~44)物音で目が覚めた。 暗い中を隣で常吉が起き出していた。 信治郎も布団をはねて起き上がった。 布団を上げ、二人して部屋を出ると、もう一人、丁稚が続いた。 三人は裏戸を静かに開け、庭..
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琥珀の夢(39)信治郎は常吉から主人の小西儀助が使う特注のランプの掃除を教えてもらった。主人は夜の仕事のためにこのランプを大事にしているのだった。 ランプの掃除を終えて弥七に報告に行くと、皆も片付けが終わったと..
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『琥珀の夢』(38~40)信治郎は竈のまわりを拭いている下女のマキに訊いた。 「他の丁稚さんはどこだすか」 「裏の洋酒のとこでっしゃろう。その前に、その木桶洗うて雑巾もよう絞らなあきまへん」 「へぇ~い」 遅う..
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『琥珀の夢』(35~37)たちまち陽が暮れて、夜になった。 朝、釣鐘町の家で食べてから、何も食べていなかった。 常吉は番頭さんが呼んだはるで、と言い、その目を庭先にむけた。 「あれで掃除したはんかいな。ほれ、お..
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『琥珀の夢』(31~34)その唐薬問屋を中心に小売薬商がぽつぽつ集まり、そこに国産の和薬を扱う店も加わってきた。薬種商いの集住する町になるのを決定づけたのは、享保七年(一七二二年)に八代将軍徳川吉宗が、薬種中買仲間株..
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『琥珀の夢』(27~30)大阪商業学校へ通って一年が過ぎた頃、信治郎はまた父、忠兵衛に呼ばれた。 「どや商業学校の方は? 上手いこと行ってるか」 「へえ、役に立つ学問もありますが、株式会社にする商いの勉強やらは、株主..
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『琥珀の夢』(20~23)信治郎は近所の子供と遊ぶこともあったが、たいがいは一人で過ごした。歩くことが好きだった。歩くことで自分の知らない、新しいものや、まぶしいものに出逢い、それを見ることが好きだった。 母、こまは..
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『琥珀の夢』(17~19)晩年になって、信治郎は自らが著した半生の記(“道しるべ”)の中で、母、こまの思い出を語り、幼少時代の母に手を引かれてお参りした天神さんの橋の上のくだりを鮮明に記憶して著している。 普段やさし..
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『琥珀の夢』(14~16)その神さんを探しているわけではないが、信治郎はいろんなものを見るのが好きだった。 店構えも、看板も地蔵さんの前垂れも見つけるのは好きだったが、信治郎は何より新しいものを見ることが好きだった。..
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『琥珀の夢』(11~13)信治郎が誕生した明治十二年という年は、明治の新政府となってまだ十年と少しを経過しただけで、国家の形勢としては不安定な時期であった。 特にそれまで武家社会の中にいて、代々家禄を与えられて生きて..