記事「日経新聞」 の 検索結果 2587 件
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『迷いの旅籠』(247~249)身の丈は、清左衛門よりは小柄だ。蓑がくるぶしの上まで届いている。その裾から覗いているのは、季節外れの雪沓だった。 「誰だ」 清左衛門が鋭く声を投げると、その人物は素早く逃げ出した。 「待..
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『迷いの旅籠』(244~246)「村井様、兄ちゃんが死んじまう」 富一は欣吉の小屋に寝かされていた。 増水し沢の泥水には、砂利や岩の欠片、へし折れた枝などが交じっている。富一の身体は傷だらけになっていた。片脚が折れ、右腕..
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『迷いの旅籠』(241~243)「富一も千治も、まだ下村へ行ったことがないと言いますのでな。あるとき、巡視のついでに、兄弟を下村に連れて行こうと思い立ちました。 ところが、欣吉がいかんと申すのです」 ――ここの者どもは、..
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『迷いの旅籠』(238~240)「父親はすぐ召し捕られ、夫を庇い、金貸しの言い分の方が嘘だと言い立てた母親もまた捕らわれまして、むごたらしく拷問にかけられた上、二人とも死罪とあいなりました」 「何てひどい……」 「仕置きの後..
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社長の切なる願いと夢 ~日経新聞を読んで私と議論して欲しい~新聞を読まなくなっています。それに、朝、日経新聞をうれしそうに読んでいるのは社長だけかも・・・ 朝起きると新聞が配達されるのが楽しみ。新聞専用のポストに音が鳴った瞬間、取に行かれます。朝、新聞を..
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『迷いの旅籠』(235~237)「皆、口が重いのでござる」 最初の入植者である欣吉でさえ、昔のことはもうおぼろでよく覚えていないと、語りたがらない。 「まずは私が洞ヶ森村の暮らしに馴染み、村人たちといくばくかでも苦労を共に..
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『迷いの旅籠』(229~231)役人が日誌に書くのは公の記録だ。つまり村ぜんたいに関わる事柄を記すのである。 だから、そこに隠蔽しなくてはならない「何か」があったなら、その「何か」を、二人の山番士しか承知していないというこ..
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『迷いの旅籠』(226~228)「鬼というのは、要するにこの生吹山を喩えた言葉ではないのかな」と、利三郎は言った。 雪解けが進み、風も温む春の日のことだ。清左衛門と利三郎は連れだって洞ヶ森を抜け、上村から下村へ向かっていた。..
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『迷いの旅籠』(223~225)――この村の在り様は変わっている。 そう思えることがいくつかあった。 まず、老人と幼子がいない。暮らしがあまりに厳しく、赤子や幼子は育たないし、老人になるほど長生きできないということなの..
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『迷いの旅籠』(220~222)「この四、五年、剣見役は、洞ヶ森村には秋の収穫時に登るのみになってのう。尚のこと、巡視と警備には山番士が頼りであった」 洞ヶ森村に置かれていた山番士は二人、その二人とも欠けたので、清左衛門と利..
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『迷いの旅籠』(217~219)「村井様は、その、何と申しましょうか。腕に覚えがおありだったのですね」 「どれほどの覚えでござるかの。ただ、この道場の師範代を務めたことがあり申す。 家臣の私闘は、理由の如何を問わず、よくて..
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『迷いの旅籠』(211~213)「そうして、ある日」 老いた中間が一人、おろおろしながら彼の帰りを待っていた。 「聞けば、ほんの四半刻(三十分)ほど前、屋敷の裏手で雪かきをしている志津を、何者かが連れ去っていったというので..