記事「ツイッター小説」 の 検索結果 45 件
-
今週の140字小説10海面がぼこりと盛り上がる。巨大な月が姿を現す。夥しい量の海水と幾千もの光の粒子を滴らせながら月はゆっくりと高度を上げてゆく。夜の波間に零れ落ちた光の欠片たちが輝きを失う頃。月は黄色い光を放ち始める。い..
-
今週の140字小説9ダムは決壊寸前だった。震えが止まらない。嫌な汗が脇の下を伝う。鏡を見なくとも自分の顔が青ざめているのが分かる。黒板の上の時計を見る。あと10分。堪えるか。挙手してトイレに行くべきか。嘲笑を浴びるのは目..
-
今週の140字小説8じゃ面接に行ってくるよ。はい。頑張ってきてね。わたしは笑顔で息子を送り出す。引きこもり生活から抜け出そうと奮闘する姿を見ていると思わず目頭が熱くなる。さぁ、電話しなきゃ。今から伺いますのでよろしくお願..
-
今週の140字小説7Googleタイムトラベルβ版がついに始まった。Enter。あたしは画面に吸い込まれる。まばゆい光。衝撃。――1993。夏。確かにあたしはこの海岸にいた。いた。あたしだ。「ちょっとあんた」「お姉さん誰..
-
今週の140字小説6あたしだけ子供の頃の写真が少ないって母に文句を言うと必ず横っちょから兄たちがお前は橋の下で拾われたからだよー。へっへー。などと言ってからかってくる。そんなことないよね? 母は笑う。そういえば、あんたが..
-
今週の140字小説5「あなた。彩がね、幼稚園から帰るなり変な事言うの」「なんだい?」「あの子お花が大好きでしょ」「お花屋さんになりたいってか」「それが違うの。お刺身にタンポポをのせる人になりたいって言うのよ」「一体どこで..
-
今週の140字小説4教室に入ってすぐのところに置かれた石油ストーブを仲間たち数人で取り囲んでぬくぬくとぬくもりながら立ち話をしていると始業のチャイムがキンコン鳴ってしょうがねーから席に戻るべかと渋々動いたとたん熱された制..
-
今週の140字小説3がこん。という情けない音と共に突然エレベーターは止まった。僕は顔を上げる。階数表示のランプは消えている。閉じ込められたのは僕とOL風の若い女性。二人きり。極限状態に置かれた男女の間に恋が生まれる確率約..
-
今週の140字小説2時間ダ。Nobkov205は青空から垂れ下がる白い紐を引いた。すると空がくるりと反転。夜になった。次にNobkov205は砂浜の砂を掴み、虚空に撒いた。闇夜に浮かんだ砂粒は、小刻みに震え瞬く星となった..
-
今週の140字小説1ニューオータニ前の車回しは中継車で埋まり、報道陣でごった返していた。「なぁ、今日なにかあるのか?」私は隣の妻に訊いた。「大物ミュージシャンが会見でもやるんじゃない」そういえばファンらしき人もちらほらと..
-
今週の140字小説10「ハリガネムシって知ってる? そうそう、カマキリの腹の中に住んでる黒くて細長い奴。あれね、おれ食ってみたんだ。もずくみたく酢の物にしてさ。味? まぁ大人の味だね。ちと苦味はあるんだけど歯応えが良くてさ..
-
今週の140字小説9いびつなハート形をした蒟蒻ゼリーを舌の上で転がしながらあたしは寝室へ行き、寝ている彼氏の開きっぱなしの口に唇を合わせる。舌で蒟蒻ゼリーをにゅっと押し込む。彼は一瞬ううんと唸った後、激しく咳き込んで目を..