記事「太陽の門」 の 検索結果 53 件
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『太陽の門』(182~186)「わが軍の兵力では、トリハも守れまい。さすればわしは、この地で敵を破ると決めた」 ミアハは政府軍の地図を太めの指で差した。 ――グアダラハラ、と記されている。 「じゃが、厄介な動きが..
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『太陽の門』(176~181)「ほれ、君も食わんか? わしはシェーブル・チーズが大好きでの」 リックはミアハが差し出してきた山羊乳のチーズに一瞥も与えなかった。 「すぐに戦死する兵を前線に送って、敵の餌食にして、いっ..
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『太陽の門』(170~175)今夜もリックは、ヘレスを並々とグラスに注いだ。 「しばらくだな、アメリカさん。一緒に飲ませてもらってもいいかい?」 聞き覚えのある濁声に、リックは驚愕して振り向いた。 なるほど、こ..
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『太陽の門』(164~169)「お会いできて幸栄です、リック。僕はビセンテ・イ・ガルディア。今は、ご覧のとおりの突撃警備隊(アサルトス)ですが、ブランカとは幼なじみでしてね」 聞けば、幼時に両親が亡くなったため、近所の..
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『太陽の門』(158~163)クリスが呆れ顔でベッドの横に立ち、リックを見下ろしていた。 「毎朝、レミントンの銃床で叩き起こされてる人間は、世界広しといえど、俺くらいだろうな」 「もう、陽は傾き始めてるよ」 二人..
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『太陽の門』(152~157)「この戦いには、大いなる意義があります。ヨーロッパの、世界の、自由と民主主義の灯火を消さないための戦いなんです」 青臭いと馬鹿にされようと、クリスは純朴な正義感だけで、スペインへ来た。 ..
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『太陽の門』(146~151)第6章 マドリードの雨 リックは今夜も不機嫌だった。 いつものように、カウンター隅の席に座り、ヘレスをしたたかに呷った。 「貴君の愚痴と皮肉を聞かないと、この街に戻った気がしなくてね..
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『太陽の門』(143~145)「――別れの盃としようや」 ミゲルの提案に、リックは小さく首を振った。 「末期の酒はまだ、早いかもな。あんたたちは、まだ生きてみる気はあるか?」 ラモンが瞠目して、呆れたように問うた..
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『太陽の門』(131~136)「どうしてお前なんかが生きているのって、何度も問い詰められたわ。 そいつの愛用の武器は、暖炉のそばに置いてある火掻き棒なの。あたしたちが人間として生きられる時間は、夜だけだった。夜明け前に..
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『太陽の門』(125~130)第5章 ラス・ロサスの虹 昼過ぎには、ラス・ロサスへ向かう。 昨夜はリックが眠りに落ちてまもなく、マチャードが司令部に呼び出されたらしい。 ふだんと違って、ミゲルは不気味なほど静かに現..
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『太陽の門』(120~124)第5章 ラス・ロサスの虹 マドリード西部戦線、タングイラ河畔の政府軍宿営地を吹く川風が、軍用トラックの幌を時おり優しくはためかせていた。 リックとマチャードの軍議の場だ。 今日の激烈な..
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『太陽の門』(116~119)パリ——ラ・ベル・オロール 4 まだ少し肌寒い朝の散歩は、モンマルトルに住み着いてからのサムの日課だった。 今や見慣れた辻を右に折れて、サムの眼が<ラ・ベル・オロール>の灰白色をしたオーニ..