記事「SF小説」 の 検索結果 56 件
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六章 共鳴のはじまり 続き古都K市に近い山麓部、富豪の別荘が立ち並ぶ一画へ、唐沢竜介は愛車を走らせていた。台風の影響で、到着予定時刻からは少々遅れているが、それも気にならないくらい彼は上機嫌だった。脳裏で、今後のスケジュー..
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六章 共鳴のはじまり 続き「案ずるな、老将軍。貴殿たちを死に兵扱いするつもりはないさ。その証に、これを用意してきた。」 そう言って赤城は、スーツのポケットから壺を取り出した。太上老君から受け取った、例の壺であった。 ..
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六章 共鳴のはじまり黙って自分の言葉を待っている赤城に隠し事が通用しないのは、今までの経験で理解していたし、何より、天藍に、敖翠鱗という存在、その起源(ルーツ)を知って欲しかった。 「俺がこの世界に来たのは逃げる為..
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六章 共鳴のはじまり夕刻、雨風はいよいよ激しさを増していた。 一年のうちでも最も日の長い時期であるにも関わらず、すでに周囲は墨を刷いたような闇に包まれている。 海郷港の一画にある倉庫街も例外ではない。その倉庫の一..
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間章?U 続き老人への畏敬の念と共に、赤城は現在までの状況を説明した。 「目下、事態はかの賊の思惑通りに進行していると考えられます。饕餮(とうてつ)と玉梓なる妖婦の跳梁により、この街の要石は全て外され..
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間章・Ⅱ街じゅうを見下ろせる高台の公園に、その男はいた。傍らに駐車してある赤いスポーツカーに軽く腰掛けるように、下界を睥睨(へいげい)している。 色の濃いサングラス越しの視線が捉えているのは、臨海ス..
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五章 多すぎる見舞い客 続きその切り札を神妙に押し頂き、麟児は答えた。 「――俺も戦線復帰しようと思ってね。」 「馬鹿を申すでないわ!」 窓の外の声が、荒くなった。 「若や公主のお言葉を聞いてなかったのか!?あの..
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五章 多すぎる見舞い客 続き「そうだよな。あいつにも日常があるんだよなぁ。」 桔梗荘に戻る地下鉄の中、隆がぽつんと言った。地下鉄の壁は暗く、対面のガラスには並んで座る天藍と隆が映っている。 「帰る家があって、学校に行..
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五章 多すぎる見舞い客 続き――冥府の最奥部には、殷王朝の王の魂が封じられていた。 殷の紂王は、かつては斜陽の王朝を救う英雄と思われて、また自負していた。そして、本来ならば、その期待は実現するはずだった。だが、人間界へ..
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五章 多すぎる見舞い客「見えた。あれあれ。あれがそうだよ、多分。」 少し離れた所に見えた葛城モータース看板を、隆が指差した。 こうした店舗兼住宅の場合は、どこかに住宅用の入り口を作る物だが、この時間ならば家の人間は..
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五章 多すぎる見舞い客 続き一夜明け、麟児の元に隆から電話があった。今日の昼過ぎに見舞いに来る、と言うのだ。 遠路はるばるご苦労な事だと思ったが、土産にいい話を持っていくと言っていた。どんな話だかは分からないが、あまり期待..
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五章 多すぎる見舞い客 続き天藍公主は、彼女らしからぬ表情で、それを眺めていた。桔梗荘の一室、ベットの上である。 掌に乗せたそれは、隆から渡された翡翠の指輪である。 返そう。天藍は、そう思う。しかし思うたび、内心に去来す..