記事「日経新聞」 の 検索結果 2564 件
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『迷いの旅籠』(15&16)「行灯の担ぎ手は決まっているの?」 「へえ。村のひとつの家から、一人か二人ずつ。おなごは入れません。だから家で炊き出しをしながら待ってるんです」 「担ぎ手の人たちは、一晩中歩き回るの?」 「..
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『迷いの旅籠』(13&14)「輿みたいにね」 「へえ。けど御神輿とは違うんですよ。揺さぶったり、高く持ち上げたりしたら、なかの油がこぼれて燃えちまいますから」 「鳴り物は何にもないの?」 「担ぎ手の足をあわせるため..
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『迷いの旅籠』(10~12)「これは見込んでもらったものだわ。そういうことなら、わたしはお稽古の相手にうってつけだと思うわ。さてどういうふうに始めるか、ちょっと考えてみますからね。おつぎちゃんはお饅頭を召し上がれ」 「へえ..
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『迷いの旅籠』(8&9)「おつぎちゃんの村には、お殿様は何人おられるの?」 「お三方おられます」 おちかの実家のある川崎宿周辺にも、似たような村がある。だからわかるのだが、こういう村にはまず村長がそれぞれにいて、さ..
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『迷いの旅籠』(6&7)「この先のいましめのためにぃ、よぉく聞いていただくのがいいっておっしゃってました」 「でもね、おつぎちゃん。うちの伺うお話は、ここから外には出さないことが決まりなの。おつぎちゃんが語って、わたし..
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『迷いの旅籠』(4&5)「さ、これでお膳立てはできました」 お勝が畳に軽く手をついて立ち上がる。おしまもしとやかに一礼して引き下がる。 「うちは袋物屋だから、縫い物をする職人さんや、縫い子さんがいるの。おじいさんか..
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『迷いの旅籠』(2&3)第一話 迷いの旅籠 子供である。 江戸に来て歳をふたつ加え、十九になったおちかの目にはまだ子供にしか見えない女の子だ。歳は十二、三というところだろう。 「どうぞ、お嬢さんがこちらにお座り..
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『迷いの旅籠』(1)序 三島屋は、江戸は神田、筋違御門先の一角にある袋物屋である。主人の伊兵衛とおかみのお民が夫婦二人で心を合わせ、律儀に働いて興した店だが、今では袋物屋のふたつの老舗、池之端仲町の越川、本町二丁..
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『禁断のスカルペル』(318&319)翻身(九)&(十) 二人で訪れた絵里香の病室で、東子はしかし思いがけず、嬉しい驚きに出会った。 絵里香がCDを聴いていたのだ。 「和泉さんにお願いして、これ、借りちゃいました」 「それ..
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『禁断のスカルペル』(316&317)翻身(七)&(八) 病院に着いて、表玄関からエレベーターホールに向かった東子たちは、待ち構えていた泌尿器科の看護師に声をかけられた。 「トンコ先生、大倉先生が見えられました」 「陸奥先生と..
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『禁断のスカルペル』(314&135)翻身(五)&(六) 「純子が亡くなって、私は気がついたのです。私は一人で生きているつもりになっていたし、何事にもまず自分というものがある、と思いこんでいた。 でもね、そうじゃなかった。今度の..
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日経新聞で6月1日から『迷いの旅籠』が連載開始久間十義氏による『禁断のスカルペル』が5月に31日に終了し、6月1日から宮部みゆき氏による『迷いの旅籠』が始まります。挿絵は北村さゆり氏が担当されます。 (2015年5月25日・日経新聞朝刊よ..