記事「一人芝居」 の 検索結果 94 件
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自作小説「一人芝居」31 第十章 「エプロン姿」(その四 )大町は服を脱いで浴室に入った。湯に浸っているうちに、眠気がすうっと引いて行った。彼は体を洗いながら、これも由紀子との行為の準備であるような気がしておかしかった。大町の脳裏に彼女の肢体が浮かんできた。..
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自作小説「一人芝居」30 第十章 「エプロン姿」(その三)「私の両親にも会ってほしいわ」 「そうだな」大町は少し間を置いて、「俺も三十才になったんだからな。由紀子も二十六才か」としみじみとした口調で言った。 「急に何よ、年のことを言い出して。そのこと..
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自作小説「一人芝居」29 第十章 「エプロン姿」(その二)由紀子はエプロンを外すと、テーブルにつき、茶碗にごはんをよそった。 「さあ、食べましょう。今夜はあなたの好きなロールキャベツよ」 「気を遣わせて悪いなあ」 「その言葉、ちっとも真実味がこ..
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自作小説「一人芝居」28 第十章 「エプロン姿」 (その一)大町はチャイムを鳴らした。ほどなくドアが開いて由紀子が顔をのぞかせた。 「いらっしゃい」 大町は部屋の中に入ると、自分でドアをロックした。 「今、料理を作っているところ」 由紀子..
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自作小説「一人芝居」27 第九章 「浮遊する魂」(その二)「できない、できない、そればかりじゃないか。死がこういうものとは、ひど過ぎる。生きている間はみんな苦しみや悩みを背負っているが、死ねば絶対なるものに溶け込み、そういう生の苦しみから解放されて永遠の安ら..
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自作小説「一人芝居」26 第九章 「浮遊する魂」 (その一 )中井は今、自分がどこにいるのかはっきり分からなかった。どこか遠い所にいるような気がした。彼は宇宙船から放り出された飛行士のように、星が無数にきらめいている大宇宙の中を自分一人で遊泳しているのではない..
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自作小説「一人芝居」25 第八章 「麻雀パイ」 (その二)大町は彼ら麻雀組と一緒に会社を出た。あたりはすでに暗く、どのビルの窓も煌煌と明かりが灯っていた。彼はそれらの窓の明かりを見ながら,今日の仕事も終わったという実感を味わっていた。 「うちの課長は人..
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自作小説「一人芝居」24 第八章 「麻雀パイ」 (その一 )帰り支度を整えていた大町に井上が声を掛けた。 「これに付き合わないか」井上は麻雀パイを倒すしぐさをした。 「今夜は駄目なんだ。用事があってな」 「そうか。それは残念だ」 井上はそう..
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自作小説「一人芝居」23 第7章 「透明人間」(その三)そしてようやく中井は発見した。相手の肩をつかもうとしている自分の手自体がどこにもないことを。手があると思っていたのは幻想に過ぎなかったのだ。手を動かしたと思ったのも意識の上のことだけで、その行為を目..
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自作小説「一人芝居」22 第7章 「透明人間」(その二)一人の男が課長のデスクに近づいてきた。その男は傍にいる中井を気にも止めずに課長に直接呼びかけた。 「課長、ただ今戻ってまいりました」 「おお、君か。首尾はどうだった」課長は身を乗り出して尋ね..
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自作小説「一人芝居」21 第7章 「透明人間」(その一)中井は課長のデスクの前にいた。課長は書類に目を注いでいたが、その表情には厳しいものがあり、中井は声をかけるのをためらった。課長はふと顔を上げてこちらを見た。中井は口を開こうとしたが、課長は彼の姿に気..
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自作小説「一人芝居」20 第6章 「独身者のひがみ」 (その3)三人は奥まったテーブルに就いた。注文を取りに来たウェイトレスが去ると、井上は声を落として言い出した。 「うちの課長の転勤の話、知ってるか」 「えっ」田代は声を詰まらせた。 「本当か」と大..