記事「太宰治」 の 検索結果 859 件
-
マイナスとマイナスをかけてプラスに転じる「マイナスとマイナスをあわせてプラスに転じる」 このようなことを、太宰治が確かどこかで書いていたような記憶があって、今、ネットでちょっと調べたところ、「ヴィヨンの妻」という小説の主人公のセリ..
-
乞食学生 第5回(6)「五一郎君、」と又、佐伯のほうに向き直り、「僕は、君を、責めるんじゃないよ。人を責める資格は、僕には無いんだ。」 「責めたっていいじゃないか。」佐伯も、だんだん元気を恢復して来た様子で、「君は、いつ..
-
乞食学生 第5回(5)「そうですとも。」熊本君は、御機嫌を直して、尊大な口調で相槌打った。「私たちは、パルナシヤンです。」 「パルナシヤン。」佐伯は、低い声でそっと呟《つぶや》いていた。「象牙《ぞうげ》の塔か。」 佐..
-
乞食学生 第5回(4)「待っていましょう。」熊本君は、泰然《たいぜん》としていた。「ここは、女の子がいないから、気がとても楽です。」やはり、自分の鼻に、こだわっている。 「ビイルを飲めば、いいじゃないか。」佐伯は、突然、..
-
乞食学生 第5回(3)「君はくだらない奴だね。」と私は、思ったままを、つい言ってしまった。 「ああ、そうさ。」すぐに、はね返して寄こすのである。「だから、はじめから、言ってるじゃねえか。説教なんか、まっぴらだって言ったじ..
-
乞食学生 第5回(2)佐伯は、黙って一歩、私に近寄った。私は、さらに大いに笑った。佐伯は、ナイフを持ち直した。その時、熊本君は、佐伯の背後からむずと組み附いて、 「待って下さい。」と懸命の金切り声を挙げ、「そのナイフは、..
-
乞食学生 第5回(1)私は暫《しばら》く何も、ものが言えなかった。裏切られ、ばかにされている事を知った刹那《せつな》の、あの、つんのめされるような苦い墜落の味を御馳走された気持で、食堂の隅の椅子に、どかりと坐った。私と向い..
-
乞食学生 第4回(8)三人は、下宿を出て渋谷駅のほうへ、だらだら下りていった。路ですれちがう男女も、そんなに私の姿を怪しまないようである。熊本君は、紺絣《こんがすり》の袷《あわせ》にフェルト草履《ぞうり》、ステッキを持って..
-
乞食学生 第4回(7)「かまわない。大丈夫だ。」私は頑張った。「こんな学生を、僕は、前に本郷で見た事があるよ。秀才は、たいてい、こんな恰好《かっこう》をしているようだ。」 「帽子が、てんで頭にはいらんじゃないか。」佐伯は..
-
乞食学生 第4回(6)「待て、待て。」私も立ち上って、佐伯を引きとめた。「君には、帰るところは無い筈だ。熊本君だって、制服を貸さないとは言ってないんだ。君は、だだっ子と言われても仕様が無いよ。」 熊本君は、私が佐伯をや..
-
乞食学生 第4回(5)「制服と帽子? あの、僕の制服と帽子ですか?」熊本君は不機嫌そうに眉《まゆ》をひそめ、それから、寝ころんでいる佐伯のほうに向き直って、「佐伯君、僕は不愉快ですよ。僕を、あまり軽蔑しないで下さい。いった..
-
乞食学生 第4回(4)私は部屋の隅にあぐらをかいて坐って、二人の様を笑いながら眺めていたが、なんだかひどく熊本君が可哀想になって来て、 「里見八犬伝は、立派な古典ですね。日本的ロマンの、」鼻祖と言いかけて、熊本君のいまの..