記事「ファンタジー」 の 検索結果 7089 件
-
マラメアの海賊・その112ザカリアは少年が、切れかかった静索を修理しようとメインマストに登り、一番高い帆桁から落ちたと説明した。そもそもその静索は、誰かの手で切れ目が入れてあったらしいこと、ヤードに繋ぐ金具も油まみれだっ..
-
マラメアの海賊・その111「荷物の中身は確認済みと云ったな。二人とも見たのか?」 「いや。カシムは身体検査にご執心だったし、覗こうとしたときもサィードが見せなかった」 「ふん、それで騒がしかったのか。サィードは理由を訊いた..
-
マラメアの海賊・その110「ああ、これは関係ない。お袋の形見で、さらわれたとき身につけていたものだ。淫乱で身勝手な女だったが、家柄だけはよかった」 イヤリングを指先で弾いてキラキラと光らせ、元海賊の女は薄く微笑んだ。おそら..
-
マラメアの海賊・その109その言葉にベリルは、遠慮なく楽しげな笑い声を響かせた。ベットを軽く軋ませて座り、身を乗り出しながら近々と船長の顔を覗き込む。 「まさかわたしが、あの坊やの女房に?・・・それはないな。まあアスールが..
-
マラメアの海賊・その108ウィンダミアのディオル金貨ではない。刻まれた意匠や純度から見て、おそらく7~800年前にヘザヴィで鋳造されたものだ。希少価値も含めれば、ディオル金貨のほぼ二倍に相当するだろう。当時沈没した船団の残骸..
-
マラメアの海賊・その107「船長に客です、通しても構いませんか」 入れという答えに、サィードが扉を開ける。ベリルの胸もとに荷物を押し付けると、彼は顎をしゃくって船長室の中へ通した。 「剣は預かっているし、荷物の中身も確認..
-
マラメアの海賊・その106「また会えたのは嬉しいが、一体どういう風の吹き回しだ?その重たそうな荷物は?アスールに話でもあるんだったら、ちょうど出かけて・・・」 なおもぺらぺら喋りそうな口へ、ベリルが指先をあてて黙らせた。そ..
-
マラメアの海賊・その105その日の昼下がり、洗濯物の翻る下で甲板に寝転がっていたサィードは、タラップがギシギシと軋む音に片目を開けた。重たげな袋を担いで現れたのは、だが、用事で街に出かけている仲間の誰でもなかった。そのくせ何..
-
マラメアの海賊・その104大きな背中を窮屈そうに丸め、ポーチの床から一つ一つ、無事なグラスの中へ破片を拾い集めている。娼婦らも入り口から次々と顔を覗かせて、興味をそそられたように見やった。いかついが信頼できそうな、確かに見覚..
-
マラメアの海賊・その103「なあ、メドック。権力者にとって一人の命は、あくまでただの数字に過ぎない。最初から顔などないし、犠牲にしたところで、掃いて捨てるほど代わりがいる。だがベロニカの子どもたちにすれば、世界中にどれだけ人間..
-
愛だけが聞こえる(39)世間の噂などに縁のない公爵令嬢と違い、わたしは近所のおかみさんたちが家の戸口で、或いは仕事から帰った男連中が、通りへ出した椅子にかけて茶を飲みながら・・・あの家の女房はとうとう、亭主の留守中に間男を..
-
マラメアの海賊・その102「ああ、自慢の奥さんでね。子どもたちも誇りに思っている」 妻の話はしていない筈だが、デーモンは構わず、当然の賛辞とばかりにんまりした。 「医学の知識に関する限り、満足するって事を知らないんだ。そ..