記事「ファンタジー」 の 検索結果 7089 件
-
マラメアの海賊・その101デーモンは震えるような吐息を洩らした。それから手話で何事か尋ねたが、答えるヘススの手の動きときたら、稲妻が閃くかの凄まじい速さだ。読み取り切れず眉間に皺を寄せ、長官が慌てたように押し止める。滅多に見..
-
愛だけが聞こえる(38)「その話ならすでに説明した筈だ、聞いていなかったのかね?」 途端に苛立ちを声に滲ませ、公爵が素っ気なく答えた。聞く者の胸に居たたまれない思いと困惑を掻き立てずにいない、あのせかせかした叱責す..
-
マラメアの海賊・その100「わたしはバド・キュレグの過去を、今度こそはっきりと見たのです、ブラッドショー長官。ただ一度近づいたときは、その影しか感じ取る事のできなかった・・・記憶の奥底に封じ込められて、正体を見極められずにいた..
-
愛だけが聞こえる(37)「ありがとうございます、お嬢さま」母も涙声で云った。 「お嬢さまはこの子に、一番必要なものを与えて下さいました。父親を亡くして以来、息子が泣いたのはこれが初めてなんです。夫から出がけにいつも、..
-
マラメアの海賊・その99「ヘススの障害についてなら、およその見当はついてたよ。多少は知識があるんでね。対処し切れない状況に曝されて不安が昂じると、発作を起こす事があるそうだな?そんなときはおまえが云ったように、ある一定のリズ..
-
愛だけが聞こえる(36)「アルフレッド・・・アルフレッド?」 女の子のうろたえた、つられて泣き出す寸前の声が聞こえる。父がそこにいると信じて語りかけたときから、その目には涙が・・・産毛みたいな下睫毛のあたりに引っか..
-
マラメアの海賊・その98彼には未来の音しか聞こえないのに?何と云う難問を押し付けてくれるのだろうと、しばし眉間に拳をあてる。デーモンはそれから、何を思ったかシャツのボタンを外し始めた。胸もとをはだけると、ブルブル痙攣..
-
愛だけが聞こえる(35)奇跡が起こらなかったからではない。彼女の青い瞳を覗き込んで、そこに自分の姿が、水面へ落ちた影のように映っているのを見たとき、父の笑顔が傍らにあったからだ。その大きな手が置かれる重みを、勇気づけ..
-
マラメアの海賊・その97同時に操っていた手話がふと、懸念を覚えたように止まる。ポーチの床へ座り込んだ先読みの全身が、彼の目の前で、雷に打たれたごとく硬直していたのだ。カッと見開いたまま瞬き一つしない瞳は、単に焦点が合わない..
-
愛だけが聞こえる(34)「大切なお父さんを、あなたの息子から奪ってしまって・・・ひっく、ごめんなさい。わたし、ずっと謝りたかった。わたしの代わりにアルフレッドが、お父さんのいない淋しさを・・・が、我慢しなきゃいけないな..
-
マラメアの海賊・その96「いや、実にザカリア向きの奴だと思ってね。俺は勿論、謹んで辞退したいが。・・・もはや自分の知っている奥方ではない。何度言い聞かせたところで、容易く気持ちの切り替えがつかないか?大方おまえの敬愛の念に妨..
-
愛だけが聞こえる(33)「どうか・・・そんなふうに泣かないで、小母さま。わたしただ、ヒューバート隊長に最後のお別れを云いたかったの。人は亡くなったら、魂だけになるんでしょう?お葬式に参列できなくなったときね、隊長ならどこ..