記事「ファンタジー」 の 検索結果 7089 件
-
マラメアの海賊・その47無情に云ってくるりと背を向ける。甲板に血の痕を曳きつつ船べりへ辿り着くと、サィードは船長の無表情な横顔を一瞥し、そのまま海中へと身を躍らせた。黙したままそこに立ち、ザカリアは苛立つでもなくアスールに..
-
霧のセイレーン(21)半ばあたしの答えを、予期しているんだねと魔女は見て取った。おそらく鈍感というより、この男は霊気や術の影響を受けにくい、稀れな資質の持ち主なのだろう。だとしたらこれも一つの、希望の徴しと云えるのではな..
-
霧のセイレーン(20)「彼はあたしが振り返ると、現実にはあんたたちがいたわけだが・・・親しみのこもる笑顔でこう云った。「僕は父の使いで来ました、デーモン・ブラッドショーを覚えておいでですか?」とね」 「俺が?」なぜか衝撃..
-
マラメアの海賊・その46「・・・ったく、死に難い化け物め。手間ァかけさせやがって」 がくっと膝を落として長剣にすがり、ザカリアは苦しげな息を吐いた。目を剥いたまま転がる死体から、ミズンマストの斜めに傾いだ帆桁へ視線を移..
-
霧のセイレーン(19)「一を聞いて十を知り、絡まりあった糸にも慌てず騒がず、徒らに疑って時を失う愚も犯さない。その若さで一体、どんな人生を過ごして来たものやら。・・・ウォレル将軍は評判通りの名将らしいね?あんたのような男を..
-
マラメアの海賊・その45振り絞るような大声で「ヴァザラック!」と叫びながら。その声に邪魔されたか、それともまだ朦朧としていて手もとが狂ったか。円月刀の切先は危うくザカリアの首を逸れ、ガツッと甲板を噛んだ。振り返ればきらめく..
-
霧のセイレーン(18)これでも傷心しかかっている男に、何て容赦のない言葉を吐く婆さんだ。デーモンは微苦笑しながらも、質問の意味をよくよく反芻した。 「そうだな、せいぜい足掻いてみようと思ってるよ。・・・いつか他に、結婚..
-
マラメアの海賊・その44剣戟の響きも喊声も、一瞬すべての物音が脳裏から消えた。血糊の絡みつく怜悧な刃の先には、燃えるような赤毛を靡かせて立つ女海賊。少年は浅く呼吸しながら、その爛々と輝く瞳をひたと見据えた。野性の光を放つ強..
-
霧のセイレーン(17)勿論ですとも。そういう事なら、彼以上の適任はいませんよ。黒馬が鼻孔を広げてヒヒンと嘶き、エレノアもそれを肯定の印と受け取ったものの、結局のところ、自ら云い出す踏ん切りはつかなかったらしい。それもこれ..
-
霧のセイレーン(16)ここよりずっと北の、空気に潮の香りと、まとわりつくような湿気が混じる土地で、思いがけず二ヶ月近くもある陰気な館に閉じ込められていたときの事だ。夜毎湖の底から響くこの世ならぬ歌声や、それに引き寄せられ..
-
マラメアの海賊・その43どっちが海賊かわからない下卑た口を叩き、ザカリアが渾身の力で円月刀を跳ね上げる。そのままの勢いで振り下ろした切先を、ヴァザラックは巨漢に似合わぬ柔軟さで避けた。踵に重心をかけて踏ん張り、上半身をぐい..
-
霧のセイレーン(15)デーモンが家畜小屋の扉を開けたとき、三白流星の黒馬は驢馬のメイベルと一緒に、飼い葉桶のまぐさをあらかた食べ終えたところだった。その姿より嗅ぎ慣れた匂いに(主人は逆光を背に入って来た)、刷毛で描いたよ..