記事「ファンタジー」 の 検索結果 7089 件
-
マラメアの海賊・その36船員たちの間にもどよめきが起こった。不吉な赤い帆を張る船など、他にあろう筈がない。誰もが船べりから身を乗り出し、首をよじるようにして、転針を終えつつある船に目を凝らした。『蒼龍』が舳先をほぼ、そちら..
-
霧のセイレーン(8)「うん。・・・あのな、もう一度求婚してもいいか?」 ああわたし、本当にこの人じゃなきゃダメだわ。息苦しいような胸の疼きを覚え、エレノアは泣き出しそうになるのを堪えながら、彼の肩に面を伏せたまま頷い..
-
マラメアの海賊・その35アスールは落ちた場所より、ずっと南東の海面に顔を出したのだ。抜き手を切って漕ぐボートでなく、なお潮に押しやられつつ、流れを横切るように泳いでいく。何度も波を被っては、消えたり現れたりしながら。 ..
-
霧のセイレーン(7)頑固に弱みを見せようとしないこの娘が、なぜあんなふうに狂おしく泣いたのか。その点を頼みにできるほど彼は自惚れていなかったし、自分の望みならすでに、しつこいほど伝えてあった。エレノアは答える代わり、そ..
-
マラメアの海賊・その34「うん、このロープ・・・切れ目が妙にきれいなんだ。自然に磨り減って切れたとしたら、縒り目がまちまちな長さにほつれる筈だし、もっとバラけるんじゃないかな?それにどういうわけか、金具が油でベタベタになって..
-
霧のセイレーン(6)気づいたときは三白流星の黒馬に跨ったデーモンが、眩いばかりの青空を背景に見下ろしていた。光線の加減で濃い藍色にも見える、複雑な輝きを映す黒い瞳。その柔らかな黒髪は小麦畑を騒がせて吹く風に踊り、白いシ..
-
マラメアの海賊・その33しかも首長が養子に望む少年と聞いては、評判が評判を呼ぶのも当然だろう。竜神祭と先代首長の記念行事があった期間中、キア・リダは父親に連れまわされて数多くの宴会に参加したが、その一つでマリク・サシャ提督..
-
霧のセイレーン(5)木戸を開けようと立ち止まり、エレノアはようやく、スカートの裏地がまとわりつくせいで、足を運びにくいのだと気づいた。低い木戸から庭の外へ出ると、踝の上まで裾を持ち上げて再び走り出す。編んだ長い髪を背中..
-
マラメアの海賊・その32マラメアはアスールの故郷、ヘザヴィ王国の北に位置する隣国だ。ファサールからだとまずウィンダミア沿岸を北上、島国オスティスとの間を抜けた後、ベルファラス海峡の入り口を素通りし、ヘザヴィ東岸を左手に見な..
-
霧のセイレーン(4)「彼に家庭を与えておやり、エレノア。あんたにもその温もりが必要だ。たった十五で愛する両親を、ほとんど一度に失うなんて・・・辛過ぎる経験をしたんだからね。デーモンのために流す、この涙があれば充分だろうに..
-
霧のセイレーン(3)「伯父の家で暮らし始めてから、わたし・・・近くに男の人がいると、いつも落ち着かない気分になったの。男というだけで否応なしに、存在を意識させられるのが嫌で仕方なかった。何一つ含むところなどなく、わたしを..
-
マラメアの海賊・その31商工会議所広場のアーケードに事務所を構えている、シャオワン&ウェンリー商会へ届けてくれればいいと云う。ファサール港は中~大型船の着く桟橋がほぼ中央、小舟や漁船、艀の船着場は市場の位置する東側にあって..