記事「ファンタジー」 の 検索結果 7089 件
-
霧のセイレーン(2)それを聞くとエレノアは、ふいに顔を覆ってわっと泣き出した。ゲルダが自分のために、心を痛めているとわかったからだ。逃げ場を求めて押しかけながら、差し出された手の温かさにも疑いの目を向ける、こんな愚かな..
-
霧のセイレーン(1)見送りに出ていた老婆が、薬草の束を手に作業小屋へ入って来た。エレノアは怖い顔でひたすら糸を紡ぎ、視線を上げようともしない。話しかけられる事を拒絶するように、青ざめた唇が固く引き結ばれている。ゲルダは..
-
マラメアの海賊・その30「そりゃおめでとさん。おまえの姉さんは確かに、ちょいとムクレてるだけだろうがな。これだけバカと大嫌いを連呼されたら、普通はヘコみそうなもんじゃねえか?まったくどうかして・・・とにかく、いい加減で離れろ..
-
マラメアの海賊・その29何気なく後ろから覗き込もうとしたときだ、少年がくしゃっと手紙を握り締めた。しかもどうした事か、三人のまわりを声もなく、ピョンピョン飛び跳ねはじめたではないか。皆をぽかんとさせたまま、喜びではち切れそ..
-
マラメアの海賊・その28「あんたがアスール・ブラッドショー?」 水面へ浮かび上がってきた少年に、桟橋の上から一人の男が声をかけた。興奮の連続だった一月半も瞬く間に過ぎ、数日後はマラメアへの航海に出るという午後の事だ。食..
-
「百年の孤独」(1)「孤独」という言葉から私は、冷たく荒涼としたイメージしか思い浮かばないのだが、ガルシア=マルケスがこの小説で描き出したブエンディア一族百年の孤独は、火傷するほど熱く、血生臭く、すべてを呑み込んで押し流..
-
マラメアの海賊・その27『鷹狩りではザカリア小父さんの銀嶺号が、三羽めの兎を最後の最後で仕留め、劇的な優勝をおさめました。それにテンが一匹と鶉三羽です。他の族長は鷹匠任せだったけど、小父さんは自ら操ったんだよ。政務ですごく忙..
-
マラメアの海賊・その26その夜の祝宴は何もかもが輝かしく、胸を熱くさせた一日の終わりに相応しいものとなった。普段の酒の席と違ってどんなバカ騒ぎもなく、飲み過ぎて乱れる者もない。誰もが静かに、だが満ち足りて酒を酌み交わす。宴..
-
マラメアの海賊・その25船団は次々と帆を畳んで、光の瞬く湾内に投錨した。数百もの小舟や艀が岸壁から漕ぎ出し、水面に松明の火影を揺らしながら近づいていく。竜神の社を詣でた夜は上陸せず、それぞれの船上で宴が張られる慣わしだ。そ..
-
マラメアの海賊・その24「機敏に反応しています。標的にこれだけ好き放題をされては、さすがに矜持が許さないようですね。もたついているのは一時と十時の方向」 傍らに立つガレリが、単眼の望遠鏡を覗きながら答えた。 「潮時..
-
マラメアの海賊・その23そのとき『蒼龍』の位置は艦隊の先頭。ザカリアはまず、速度を上げさせて抜け出すと、背後との距離を充分開けてから面舵を切った。甲板員らが掛け声も勇ましく、機敏な操作でヤードの角度を調節すると、船の舳先も..
-
マラメアの海賊・その22まずは指揮系統の確認を行うため、それぞれ通常航行時、臨戦態勢、戦闘時を想定し、輪形、扇形など様々な陣形を型通りに組んでいく。艦隊の総旗艦『蒼龍』から出される命令は、速やかに各部族4~8隻からなる船隊..