記事「小説」 の 検索結果 36259 件
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第57話 抵抗の形-17今が何月何日なのか、季節は春なのか秋なのか、世間ではどんなことが起こっているのかいないのか、厚い壁に閉ざされた囚人にとっては、それら全てが関心の外にあった。投獄された当初は誰しも外界の情報を得ようと..
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第57話 抵抗の形-16シブレットは話を続けた。 「カスタネには愛する女性がいる。」 「ああ、それは知ってるとも。ブロンディーヌだろ。」 「もちろん君は彼らを知ってる。セヴェンヌで彼らの結婚式を司ったのは君だからな。..
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第57話 抵抗の形-15シブレットの心の奥には、学生時代にディマンシュによって演じられたスザンナの姿が今も大切に保存され続けていたのである。しかし、この秘密は生涯、誰にも告げられることはなかった。 「ジュネーヴに戻ってい..
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第57話 抵抗の形-14姉妹は贈り物を手にしてその場を立ち去った。 「ねえ、お姉様、今の人誰かに似ていなかった?」 「そういえば、わたしも誰かに似ているような気がしていたんだけど…。」 「ディマンシュに似てると思わな..
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第57話 抵抗の形-13ジュネーヴの中心にあるサン・ピエール教会には、復活祭ということもあって多くの人が出入りしていた。ディマンシュはその近くに立ち寄ってみた。かつてジュネーヴ学院で共に学んだ同級生の姿も散見されたが、だれ..
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第57話 抵抗の形-12物売りの女は暴言を吐いた男の手をぐいっとひねった。 「うわっ、痛てて!」 「そういう言い方をするのはやめるんだ。」 その力も声も女のものではなかった。 「そ、その声…?」 「まさか、カヴ..
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第57話 抵抗の形-11一七〇五年四月十二日、普段は慎ましやかな生活を送っているジュネーヴもこの日ばかりは浮き立っていた。長く続いた寒さも緩み、街には花と菓子があふれ、色とりどりに染められた卵が飾られていた。キリストの復活..
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第57話 抵抗の形-10ディマンシュを葡萄酒の樽に入れて連れ去ったのは、サラであった。ディマンシュが引き回された最初の村の住民たちの中で、サラに連絡した者がいたのであった。 安全な場所まで来て樽のふたを開けてみると、デ..
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第57話 抵抗の形-9青年団たちはその村を出て、次の村へと向かった。そこへ酒樽を乗せた荷車を引く女たちがやって来た。 「あ、あれが噂の十字架青年団なのだわ。」 「頑張ってくださーい!」 彼女らは愛想よく青年団に手..
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第57話 抵抗の形-8兵士たちはディマンシュを後ろ手に縛り、さらに左右と前後を取り囲みながら進んでいった。体力と気力を幾分なりとも回復したディマンシュは周囲の様子を注意深く観察していた。 突然兵士の一人が前方を指差し..
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第57話 抵抗の形-7その時、道の向こうから女が走ってきた。彼女はリヴェール神父を見るとうれしそうに言った。 「ああ、こんなところで神父様に巡り会えるとは。まさに神様のお恵み。」 「何かな。」 「実はうちのじいさま..
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第57話 抵抗の形-6「あの時、おまえに食わせてやろうと思ったものだ。携帯用の食料にも適している。」 そう言ってリヴェール神父はその袋の中から焼き菓子を取り出し、ディマンシュの口元に差し出した。しかし、ディマンシュはこ..