記事「源次郎」 の 検索結果 61 件
-
第二章-4-早暁の境内を掃除していると、ざー、ざーという箒の音に混じって、階段を登ってくる足音が聞こえてきた。 その足音に源次郎は顔を上げた。一歩一歩、確かに石段を踏みしめる音は近づいてくる。 源次郎は..
-
第二章-3-今日も階段の一番上に座って、山道を眺めていると、背中をぽんと叩かれた。 驚いて振り返ると、隣に人の座る気配があった。 「宮司様……」 鷺宮が源次郎と同じように座って、遠くへ視線を流す。 ..
-
第二章-2-神社での生活は、規則正しく、慎ましやかだった。 しかし、城では経験したことのない、下男のするような仕事までも、自分達でしなければならないので、慣れるまでが大変だった。 早朝に起き出し、神殿や..
-
第二章-1-東春日神社は、上田の庄の東端、ちょうど上田城と村々を挟んで反対側に位置していた。 山道を登り、中腹に差し掛かったところで大きな鳥居が見えてくる。本殿や社務所はそこからまだ小さな山を登るくらい上に..
-
第一章-14-織田信長軍はじわりじわりと勢力を広げていた。 今はまだ東への侵略はないし、一応の恭順は示しているので、上田城に攻め入られることはないが、遠征に出て行かなければならないことは増えていた。 上田..
-
第一章-13-「農地と山間地の気温差があって雪融けが遅いと、急に暖かくなったときに鉄砲水がでる危険が高いそうです。五十年ほど前、川の堤が決壊し、一つの村の半分ほどが沈んだことがあったそうです」 農夫から聞いた話..
-
第一章-12-厳寒の冬は長く続き、ようやく雪が融け始めた。その頃から上田の周りでもめまぐるしく情勢が動き始めていた。 ようやく外で遊べるとばかりに源次郎たちが出かけようとするが、昌幸はやんわりとそれを止めた。..
-
第一章-9-源次郎はよく武将達の集まりにももぐりこんでいた。 軍議に同席することはさすがに許されなかったが、その後の宴会や、普通の集まりにはちょくちょく顔を出して、厳つい武将達の膝に座り、彼らの話を聞いてい..
-
第一章-8-源次郎は六郎と小介を連れて、よく城下へ出かける。今は危険な情勢ではないが、それでも城主の息子がふらふらと出ていて、笑って済ませることなど出来ない。 今までは護衛が二人ほどついていたようだが、十蔵..
-
第一章-7-筧茂治は正直なところ、五歳の子どもに兵法を教えてやってくれと頼まれたときは、智将と謳われた真田昌幸も所詮は親馬鹿だったのかと、呆れが半分あったことは否めなかった。 はじめて会った息子は、確かに利..
-
第一章-6-一人で出かけた昌幸は一組の親子と一緒に戻ってきた。 「これが息子の源次郎だ」 二人に紹介された源次郎は、作法通りの挨拶をした。 「真田昌幸が一子、真田源次郎信繁にございます。以後、よろしくお..
-
第一章-5-六郎と一緒に部屋を出た源次郎は、自分の部屋には戻らず庭に下りた。六郎がついてくるのを確かめて、庭の真ん中に立った。 「ごめん……。六郎をからかうつもりはなかったんだ。本当に」 普通に碁を打てば..