記事「源次郎」 の 検索結果 61 件
-
第三章-4-佐助が持ち帰った密書は、上田城を大騒ぎさせるには十分な代物だった。 昌幸はすぐに忍び衆を使い、塚という塚、ほかにも目印に仕えそうな建物や樹木を調べさせた。 人海戦術は功を奏し、他に五枚の密書..
-
第三章-3-上田城に戻ったはずの佐助が突然目の前に現われて、源次郎は飛び上がるほどに驚いてしまった。多分、塀か木の枝から源次郎めがけて跳躍したのだろうが、慣れていない源次郎には降って沸いたように感じたのだ。 ..
-
第三章-2-真夜中にまだ冷たい夜の空気が流れ込んできて目が覚める。 首をめぐらせると、部屋の隅で佐助が膝を抱えて座り込んでいた。 「佐助……また……」 源次郎は体を起こして溜め息をついた。 上田城..
-
第三章-1-上田の庄は何も変わらず平和そうに見えた。 その年の冬は比較的穏やかで、春の訪れも早かった。寒さで倒れる人も少なく、冷害用の備えも底をつくことなく、余裕のある越冬だった。 村人達も笑顔で雪融け..
-
第二章-12-仲間になって欲しい。 源次郎の真摯な願いに、佐助は立ち上がって、着物の帯を外した。 「佐助?」 不思議そうに尋ねる源次郎の目の前で、佐助は帯の中心を裂いて、中から紙片を取り出した。 蝋..
-
第二章-11-案じられていた通り、翌朝から源次郎は高い熱を出した。 最初はふもとの医者が呼ばれたが、すぐに上田城からも医者がやってきた。 けれど暖かくして、栄養のあるものを食べさせて休ませるより他に治療も..
-
第二章-10-宗太郎が縄梯子を使い、源次郎が落ちた窪みにたどり着いた時、源次郎と佐助はしっかりと抱き合い、お互いを温めあいながら震えていた。 源次郎は半ば意識がないようで朦朧としていたが、佐助はしっかり目を開..
-
第二章-9-「佐助! 佐助!」 足跡はほとんど残っていない。白い雪が源次郎の足跡だけを残していく。 「源次郎! 源次郎!」 佐助を呼んで山を進む源次郎を、大人たちが追いかけてくる。 見つかれば連れ戻..
-
第二章-8-小さな忍びは翌日には枕から頭を離すことができた。 まだ起き上がって動くことは無理だったが、食事を取って話すことは可能になった。 しかし、源次郎にだけ口を開くので、世話のほうも自然と源次郎がし..
-
第二章-7-「………………佐助」 か細い声で告げた少年は、静かな視線を源次郎に向けてきた。黒目がちのつり目だが、きつい印象はない。むしろ、大きな黒目が幼いながら哀しみを湛えているようで、憐れみすら感じさせるの..
-
第二章-6-雪に埋もれるように倒れていた少年は、助け起こすと微かに眉を動かした。それでまだ生きているとわかった。 源次郎は首に巻いていた手拭いを相手に巻いてやり、背中に負ぶった。身長は変わらないように見えた..
-
第二章-5-手水舎に薄氷が張り、雪がちらつき始めて、山の寒さはひしひしと厳しく感じられてきた。 薪を取りに山に入っても、小枝のようなものしか取れず、雪が積もるまでに冬用の蓄えが必要だというのに、なかなか量が..