記事「琥珀の夢」 の 検索結果 173 件
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『琥珀の夢』(387~390)――神さん、こない目に遭うても、わては生きなあきまへんのだすか……。 神棚に捧げた“赤玉”と“角瓶”が信治郎の目に入った。 鬼のような形相であらわれた信治郎を見て、社員たちが息を飲んだ。 ..
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『琥珀の夢』(383~386)その日の早朝、信治郎は“赤玉”を手に天王寺に住む筒井素泉の下を訪ねた。 筒井は大阪の新聞記者で、数々のスクープをものにした名記者であった。 ――いったいどうなってまうんや。この大阪は、日本..
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『琥珀の夢』(379~382)昭和十九年暮れ、海軍燃料工場の生産が一時ストップした。 ブタノールの原材料である台湾からの白糖、沖縄からの黒糖を積んだ船が入港しなかった。 「どうやら台湾、沖縄を出た輸送船が次から次に敵の..
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『琥珀の夢』(375~378)日本は太平洋戦争に突入した。 「大将、いよいよはじまりましたな。こら、えらいことだすな」 ラジオの臨時ニュースを聞いた取引先の男が興奮に顔を赤らめて言った。 ――いよいよはじまりよったか..
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『琥珀の夢』(371~374)「寿屋の大将の海軍贔屓は感心しまんなあ。今夜もまた海軍士官の壮行会をしてはんのやて?」 寿屋へ出入りする取引先の男が言った。 「そらそうだすわ。“赤玉”が関東を制覇でけたんは、大震災の折、寿..
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琥珀の夢(371) 吉太郎信治郎はこの夜も、インドシナに向かう戦艦に乗る海軍士官の壮行会を南地の「大和屋」で催していた。 それは単なる海軍贔屓ではなく、彼らから正確な戦況の情報を得るという目的があった。 更に大..
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琥珀の夢(370) 国家総動員法1939(昭和14)年9月、ドイツのポーランド侵攻をきっかけに英仏がドイツに宣戦布告し、第2次大戦が始まった。 この影響を受けて、2年前から始まっていた日中戦争で優勢だった日本に対し、アメリカと..
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『琥珀の夢』(367~370)信治郎は“大和屋”での祝宴を終えると、待ち合わせをしている梅田のホテルにむかった。 バーに入ると、吉太郎と若手社員の作田が待っていた。 「ウイスキーの“角”を一杯くれるか」 「はぁ? 今..
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『琥珀の夢』(363~366)竹鶴は四十歳になっており、自分の手でウイスキーを造りたいという当初からの夢を実現するために、翌昭和九年、信治郎の下を離れた。 鳥井信治郎と竹鶴政孝が出逢っていなければ、今日の日本のウイスキー..
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『琥珀の夢』(359~362)昭和八年は、梅雨前から猛暑が続いた。一昨年から、日本のあちこちで伝染病が流行し、多くの死者を出していた。 二年前に満州事変が起こり、去年の春、軍部の強引な意見が通り、日本政府は満州国を擁立し..
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『琥珀の夢』(355~358)信治郎と竹鶴の新しいテーストを求めての日々が続いた。 意見が衝突することもあったが、二人とも互いを認め合っていたから感情的になることはなかった。 そんな中で、東京のビール市場に挑んでいた..
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『琥珀の夢』(351~354)売れ行きの芳しくない“新カスケードビール”の名称をやめて、寿屋は新しいネーミングを“オラガビール”とあらためた。 “オラガ”という名前は、総理大臣を務めた政友会総裁の、田中義一大将が議会での..