記事「ファンタジー」 の 検索結果 7089 件
-
マラメアの海賊・その95せっかく説明してやったのに、途中から興味を失くしたらしい。要らなくなった玩具のように彼の足を放すと、レモネードの匂いに惹かれたか、ヘススはポーチを過読みの傍らへ這っていった。 「気になさらないで下..
-
愛だけが聞こえる(32)ヒューバート隊長もこんなふうに苦しかったかしら、やっぱり堪らなく怖かった?・・・発作が何とか治まった後、天蓋の落とす影の中に消耗しきって横たわり、セシリアは人知れず涙をこぼした。枕もとには父親が寝も..
-
マラメアの海賊・その94ふっと溜息をつき、売春宿を取り囲む野次馬が不穏にざわついている事に気づく。表口に到着した護送馬車に押し込むべく、捕縛された犯人らが店の中から引き立てられてきたのだ。拳を振り上げて口汚く罵り、石さえ投..
-
愛だけが聞こえる(31)喘息という病気の原因ははっきりしないが、患者の喉は個人差こそあれ、常に炎症を起こした状態にあると考えられている。そのため気候や過度の運動、疲労、動物の毛、心理的な要因など、健康な者ならば何という事は..
-
マラメアの海賊・その93弦をかき鳴らす手を止め、盲目の占い師は淡い吐息を洩らした。おそらくその奥方とやらに、敬愛の念でも抱いていたものだろう。竪琴を膝の上に横たえると、彼は手探りでレモネードの温かなカップを取り上げた。 ..
-
愛だけが聞こえる(30)初めて見る父親の打ちひしがれた姿にどう声をかけていいかわからず、セシリアが小さな胸を痛めていると、背後から控えめなノックの音が聞こえた。現れたのは数人の小間使いで、それぞれ湯気の立つ陶器のポット、洗..
-
マラメアの海賊・その92「そりゃ苦労してるからなあ」デーモンが前髪を掻き上げた。 「彼女は16歳のときに父親を亡くしてね。母親もずっと病気がちで、弟や妹たちを養うには身を売るしかなかったのさ。自ら決めた事といえ、やはり人知..
-
愛だけが聞こえる(29)天蓋つきのベットに座ったゾーイ公爵は、シャツの襟元を緩め、ベストのボタンも外した格好でがっくり肩を落としていた。いかに肝の据わった公爵といえ、わたしの父と五人の刺客の命を奪った凄絶な斬り合いの真っ只..
-
マラメアの海賊・その91けらけらと笑う男の胸を、彼女は甘えるように叩いた。グラスへ葡萄酒を注ぐメドックの手が、思わず壜を落としそうになるイチャつきぶりだ。デーモンの傍らに片膝をつくと、ファニータはその太腿へ指を滑らせ、体の..
-
愛だけが聞こえる(28)後にセシリアの口から詳しい話を聞いたのだが、彼女は襲撃があった夜のうちに事実を知ったと云う。おそらく真夜中の少し前か、いくぶん過ぎた頃のことだ。中庭に面した二階の寝室でぐっすり眠っていたセシリアは、..
-
マラメアの海賊・その90「我が娘ながら惚れ惚れするね、男の扱いを弁えている。それでおまえの答えは・・・」 「ヘススの答えです、長官。お供の方は数年のうちに、探し求める女性を見出すだろう。そうお伝えすると満足したご様子で、お..
-
愛だけが聞こえる(27)いかに多忙だったといえ、本来なら父親である自分が気づくべき事なのに。娘の言葉を補足するゾーイ公爵の声には、そうした苦い思いが滲んでいた。フーッと洩らす鼻息も荒く、二度三度と首を振る。 「それで発作..