記事「ファンタジー」 の 検索結果 7089 件
-
マラメアの海賊・その89「返事には勿論、娘を喜ばせる事ばかり書いてあった。おまけに手渡してくれた定期航路の船乗りってのは、問題の手紙を息子が読む場にも居合わせた男でね。そのときの様子まで聞かされたものだから、娘は嬉し涙が止ま..
-
愛だけが聞こえる(26)父はそれから、自分の妻も病弱だが、どんなに顔色が悪くて辛そうなときも、その苦しみを訴えた事がないと話したそうだ。軍人などという危険な仕事に就いたせいで、心配ばかりかけているのは自分のほうなのにと。女..
-
マラメアの海賊・その88「しばらく前にふらりと現れて、それからたまに、商売をするでもなくここで竪琴を弾いてるわ。どうしようか迷ったんだけど・・・長官は人身売買の組織ごと、摘発したい筈だって云うから。あたしたちを占ってくれたと..
-
愛だけが聞こえる(25)令嬢がふいに喉を詰まらせ、震えながら俯くのを見て、母はひどくうろたえた。一介の護衛隊長に過ぎない夫の名を知っている事も意外なら、なぜ自分たちに会いたがるのかも見当がつかなかったからだ。指先にそっと力..
-
マラメアの海賊・その87「情報をくれた娘もだけど、長官て頼りになる人を知らなかったら、思い切って行動できたかどうか・・・。役人じゃ苦労してきたもの。今は長官のおかげで、お給金をごまかされる事もないし、客の乱暴を訴えても門前払..
-
愛だけが聞こえる(24)セシリアの澄んだ眼差しが人を惹きつけもすれば、戸惑わせもするのは、それがまっすぐ魂の在り処を貫いて過たないからだ。見つめられた者はときに痛みすら伴う、目も眩む鮮やかな驚きを覚える。彼女の飾らない微笑..
-
マラメアの海賊・その86「わかりました。あなたの剣はメドックに持たせてやります」 売春宿では部屋へ上がる前に、剣を預けておく決まりになっている。この男も事によっては鋭いのにと肩をすくめ、デーモンはにっこり微笑んでみせた。..
-
愛だけが聞こえる(23)扉の隙間から顔を覗かせ、傍らを通り抜けて母に駆け寄った女の子はだから・・・無防備なわたしの心に、まっさらな存在として飛び込んで来たのだ。今も思い出すたび、改めてセシリアを間近に見た瞬間、胸を満たした..
-
マラメアの海賊・その85そっと身を引き離してベットから下りる。靴音も軽やかに窓辺へ歩み寄ると、デーモンは肩で壁に凭れかかり、外の様子を見下ろした。ベロニカの部屋は売春宿の二階にあって、花街の中心から一つ外れた裏通りに面して..
-
愛だけが聞こえる(22)「ほら、こんなに冷たい・・・」 その息を呑むような囁きと、肩を落とした小さな背中に何を見たのだろう。不躾を叱りかけて思い止まり、公爵は唇を固く引き結んだ。わたしたちは対面を待つ間、書斎の扉から横顔..
-
マラメアの海賊・その84「俺はデーモン・ブラッドショー、たまたまラルガ州の長官なんぞやっているがね。なに。人のやりたがらない面倒な仕事を山と押し付けられ、上手くこなしたところで滅多に感謝されず、ヘマすりゃ即こき下ろされるって..
-
愛だけが聞こえる(21)「残された息子の養育を申し出たのも、留守がちで淋しい思いをさせている一人娘の、よい話し相手になってくれればと思えばこそ。そなたからは唯一の慰めとなる筈の、愛しい我が子を取り上げるも同然なのだ。生活の援..