記事「入国管理局」 の 検索結果 729 件
-
敢えて火中の(第四十二回) 第五章 逮捕勾留(2)午後三時を過ぎていただろうか、やっと小嶋事務官が私を呼びに来た。 部屋に入るといつものように、部屋の奥に窓を背にして飛田が待っていた。 心持ち緊張したその顔に、私は結論が出たのだろうと思い、..
-
敢えて火中の(第四十一回) 第五章 逮捕勾留(1)その日の朝のことはもう遠い記憶の中にあり、天気が晴れていたのか、曇っていたのかさえ思い出せない。 だが平成十四年三月十一日の月曜日に起きた出来事は、思い出そうとして思い出せるものでもないが、忘れ..
-
敢えて火中の(第四十回) 第四章 束の間の休息(3)弥生三月の春の夜といっても、夜の冷え込みは厳しいものがある。 子供には聞かせられないと思い、妻を誘って車を出した。 五年前の五月二十一日に何が起きたのか、そして昨年の六月からどのような調査を..
-
敢えて火中の(第三十九回) 第四章 束の間の休息(2)「お父さん。キャッチボールしよう」 テレビ番組はいつの間にか終わり、末っ子の勇太がグローブを手にして、私の顔を覗きこんでいた。 険しい顔をしていたのだろう。勇太は不安そうな眼差しで、私を見つめ..
-
敢えて火中の(第三十八回) 第四章 束の間の休息(1)小春日和の暖かな日差しの中にいると、妻が掃除をする音も気にならず、朝起き上がるのが辛くなるほど、のんびりとした気持ちになった。 枕元の時計を見ると、九時を回っていた。 階下では子供たちの笑い..
-
許可される申請から許可したくなる申請への処方箋(入管のお医者さん)表題を決めて、書き始めたところで、はたと迷いが出てしまった。 入管のお医者さん、などと書き始めると、入国管理局、入国管理センター(いわゆる収容所)にいる医者の話かと誤解されるだろうか。 実は..
-
敢えて火中の(第三十七回) 第三章 東京地検刑事部(4)それ以後の取り調べが坦々と進んでいったのは当然で、昨年の六月から繰り返し話してきたことの、確認の意味しか持たなかったのだから。 それでも取り調べは、連日のように行われた。 だがそれは取調べと..
-
敢えて火中の(第三十六回) 第三章 東京地検刑事部(3)取り調べが始まって二日目の夕刻のことだった。 分厚い関係記録の束に隠れている供述調書を拾い読みしている飛田が「九鬼さんの供述の中で、本省の西検事に対する供述が一番変ですよ」と突然切り出した。 ..
-
敢えて火中の(第三十五回) 第三章 東京地検刑事部(2)「お忙しい勤務をされていたんですね。私たちも毎日のように、最終電車で帰宅するというような生活ですが、入管も大変なんですね。 でも九鬼さん、事実に反することを公文書に記載するというのは、理由がどうで..
-
敢えて火中の(第三十四回) 第三章 東京地検刑事部(1)ぐるぐると法務省の中を連れ回され、何度もエレベーターを乗り換えて着いた先が、隣の東京地方検察庁刑事部の一室だった。 ここでこれから本格的な取調べが始まることになる。 細長い部屋の奥に、大きな..
-
敢えて火中の(第三十三回) 第二章 刑事告発(4)「本当に今日で終わりますかねえ。それにしても統括は元気ですねえ」 懐かしい思い出に浸る私を、大林の力の無い声が現実に引き戻した。 「今日は処分が出るだろう。これで終わりさ、そうしたら一杯やろうよ..
-
敢えて火中の(第三十二回) 第二章 刑事告発(3)二年前のことだ。 私が可愛がっていた藤元という警守長が、入国警備官の仕事に行き詰まりを感じ、入国審査官に転官したことがあった。 藤元はがっしりとした体躯と、旺盛な好奇心を持ち合わせた優秀な入..