記事「小説」 の 検索結果 36259 件
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第56話 虜囚-22しばらくして目を覚ましたディマンシュは長椅子から半身を起こしたが、腕を組んだままじっと押し黙っていた。その様子を見たサラは心の中でつぶやいた。 『あ~あ、やっぱり相当怒ってるね。苦虫をかみつぶした..
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第56話 虜囚-21「どうした? 具合でも悪いのか?」 クラリが心配そうに言ったが、マゼルはにやっと笑ってこう言った。 「風邪でもひいてんじゃねえのか。」 ディマンシュはきっとマゼルの方を睨んだ。 「ふざける..
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第56話 虜囚-20しばらくすると、サラが盆の上に酒瓶と杯とパンの塊を乗せてやって来た。 「これが今うちにある最後の葡萄酒とパンさ。」 彼女はそれぞれにパンと杯を配り、葡萄酒を注いだ。そしてみんなで祈りを捧げた後..
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第56話 虜囚-19「ヴィヴァレか…。しかし、国王軍の側もそれは承知しているはずだ。セヴェンヌの闘いがヴィヴァレに飛び火することだけはなんとしてでも防ごうとしている。実はその地域と連携をとろうという試みはこれまでにもなさ..
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第56話 虜囚-18ディマンシュの心配は杞憂で、マゼルの隠れ家は無事であった。マゼルは空腹で今にも倒れそうな二人のためにさっそくサラに食事を用意させた。 「ふまい。ふまい。ふまいなあ。」 「クラリ、食いながらしゃべ..
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第56話 虜囚-17セヴェンヌの雨はなかなか止まなかった。一度は気力を奮い立たせたクラリもまた愚痴をこぼし始めた。 「死んだ連中はもう腹が減ることもないだろうなあ。」 「…そうだな。」 「裏切った連中は今頃たらふ..
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第56話 虜囚-16その翌日から独房にはディマンシュの幻影が現れるようになった。「アル」と呼びかける昔ながらの優しいディマンシュの時もあれば、「アルベール君」と呼ぶ冷たいディマンシュの時もあった。時にはその二人が同時に..
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第56話 虜囚-15アルが少年の日々、一緒に暮らしていた頃のディマンシュは自分やアルのために何着もの服を仕立てた。山向こうの市まで布地を買いに行き、仕立てるところまでを見ていたそれらの服のことをアルはよく覚えていた。デ..
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第56話 虜囚-14独房には澱んだ臭気が立ちこめていた。この独房で無念の思いを噛みしめてきた者たちの体臭が染みつき、それに堆積した埃や湿気、そして鼠の死骸の臭いが混じり合っていた。しかし、パリの牢獄もさしてここと代わり..
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第56話 虜囚-13雨はセヴェンヌの麓アレスでも降り続いていた。町の一角にある重厚な煉瓦色の収容所は雨に濡れそぼって、ますます陰鬱な色になっていた。 「今日も雨か…。まったく嫌になる。そしてこんな時に限って余計な仕事..
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第56話 虜囚-12「十字架青年団」なる者たちは勇気もなければ思慮もなかったが、ユグノーをひどい目にあわせるためならどれほど姑息な手であっても使うことを躊躇しなかった。そんな者たちがセヴェンヌの各地で好き勝手に跋扈でき..
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第56話 虜囚-11ガブリエルは泣いているところをリュックに見られまいと手で顔を覆った。しかし、リュックは何事かを悟ったらしく、彼女の肩に優しく手を置いて言った。 「そなたもアントワーヌ殿の死を嘆いてくれるのか…。」..