記事「詩」 の 検索結果 48605 件
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手のささやき新吉は藁打ち台の藁の束を重い木の槌でたたいていた。土間の引き戸を開けて伯父が帰ってきた。酔っているようだった。伯父は、土間のむしろに座っている新吉の前に近づいてきた。そ..
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待ってもうとっくに待ちあわせの時刻は過ぎているのに、 腕時計を眺めるでもなく、 いらいらするでもなく、 夕闇のせまる空を見上げ、 こんなに時がすべての移り変わりをゆっくり刻み続けることに安心して、 ..
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喪中はがき十年以上もまえのことだ。 版画家の先生と飲む機会があった。 かれの大言壮語には辟易した。 大金を見せびらかしたり、名の知れた著名人を罵倒したり、 自分の作品をもっともらしく解説したり、豪放磊落..
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洗濯物遠慮しなくていいんだよ。 お腹がすいたらなんでも作ってあげるからね。 冷蔵庫に必要なものがなかったら買ってくるからね。 かまわないでほしかったら、じっと隣の部屋で待ってるからね。 いつでも飛び..
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交差点にて信号が赤にかわる。 植込みの土留めに足をかける。 冷たい風に思わず震える。 すぐそばを車が行き過ぎる。 どうだんつつじの火焔の中央にクスノキが立つ。 くすのきくすくす、 空に..
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お好きにつらいと言ってあなたは髪をかき上げる。 視線がこきざみに屈折する。 ファシズムの気配をたたえたオゾンの香りがながれ、 髪がまた額にひるがえる。 空はうっとうしく落ちてくる。 何が?ときい..
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夜汽車確かなものを見失って久しい ひと通りの少ない広い舗道をすすみながら ひょいと顔をあげれば日輪はまぶたのうらにやどる わたしは顔の前に手をかざし期せずして火焔のうわずみをすくう すると植込みの針..
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駅前旅館急な階段を上る。 上がりきるとトイレがある。奥に水飲み場がある。 その間に部屋がある。 薄暗く床もミシミシする。 ふすまを開く。 四畳半? すりきれた畳にタバコの焦げ跡がある。 さびれた..
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さあ、でかけようさあ、でかけよう。 冷たい小雨降る11月に。 束縛の乱れそめにしこの糸を、 ゆらぐ老い歯で噛み切って、 修羅を燃やすわけじゃねえけれど、 堪忍袋の緒をきって、 再出発としゃれこんで、 き..
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病院へ娘が退院する。 二つ目の駅で降りてまっすぐ歩く。 見通しのいい通りなのに突き当りにある病院は見えない。 通りは少しずつ登る。 ひょいと振り返ると今降りた駅舎を小高い森がおおう。 木々はお..
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空を見る空を見る。 悲しみのアルファベットがふりそそぐ。 たとえば鉛筆で未来をデッサンする娘、A。 無造作に暗雲をつぶす。 下方の藍色の森から名も知れぬ虫けらが飛びたつ。 その虫けらの銀粉をまと..
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注射左手の親指がしびれる。 第3頸椎が損傷してる。 2、3年前、ブロック注射でなんとかなだめてきたのに。 ブロック注射は首にする。 痛くはないけど気持ちが悪い。 あるとき、注射のあと先生がさ..